Tottori diary

大切なものは、自分の目の前にある。|中村聡志

中村聡志

PROFILE

大阪府出身。NHKに入社後、初めての勤務地として鳥取県に配属され、ディレクターとして番組制作の仕事をする。2018年から東京転勤(神奈川県在住)を経て、2021年3月に退職。2021年4月から八頭町地域おこし協力隊として移住し、情報発信や移住推進に関わる。

自分にとって大切なことはなんだろうか。

答えは人それぞれにあると思うが、日常の中で立ち止まって考えることはなかなかない。でも、知らず知らずのうちに、自分が何を選んで暮らしているかが、その答えになっている気もする。

 

12年間勤めたNHKを辞め、鳥取に移住。

大きな決断をした中村聡志さんの表情は明るかった。

 

「ここでの暮らしは本当に良いですね。都会と比べて不便といえば不便なことはありますが、なんの不満もありません。いいところはたくさんあるし、おもしろいし、人の顔も見えるし、とても満足しています」

 

のどかな山並みが広がる八頭町。

住みながら感じた魅力を誰かに届けることも、自然を感じながら子育てできることも。

中村さんにとって、大切なものがここにある。

キャリアをリセットして鳥取に戻る

最初の赴任地でもある鳥取県で、妻の実穂さんと結婚し、長女と長男が生まれた。慣れ親しんだ場所から2018年に転勤し、神奈川県の逗子市に住みながら渋谷のNHKに出勤する毎日を過ごした。取り巻く環境も変わり、30代半ばだった当時、葛藤があったという。

 

「結婚して子供もでき、生活の安定を求める一方で、いつ転勤があるかわからなかったり、何日も徹夜して番組制作したり。そういうしんどそうな姿を妻も見ていましたし、妻が3人目の子供を妊娠したタイミングでもあり、いろいろ考える時期でした」

 

さらに、2020年、突如として日常の景色が変わった。

 

「ガラガラの渋谷のスクランブル交差点で、大型ビジョンに映るアイドルが『いつかみんなに会えるのを楽しみにしています』という声が妙に響いていて…。いろんなことが重なって、あぁ、自分はここにいる人間じゃないなって思いましたね」

 

地方移住を検討し、当初は、沖縄や実穂さんの実家がある香川県も考えたが、退職後の仕事を考えると、あまりつながりがない土地に行くことに不安もあった。そんな時に鳥取を訪れる機会があった。

 

「公園に行ったり、若桜町にトンカツを食べに行ったり。特別なことはしなくても気持ちが落ち着いたし、あれ鳥取ってこんなによかったっけ?と思いました。妻もママ友がいて、通わせたい自然保育の保育園もあった。自分たちが一番安心できる場所がここでした」

「やずぴょん」を通して情報発信

この日は、果樹園の多い八頭町の新鮮なフルーツが揃う道の駅はっとうで待ち合わせ。中村さんは仕事箱を開けてゴソゴソと準備を始める。八頭町のマスコットキャラクター「やずぴょん」を使って、SNSでの発信を地道に続けてきた。

 

この日は八頭町産のりんごを使ったりんごチップスを紹介。

「もう食べたら病みつきになりますよ、これ」と笑う。

 

「情報発信の仕事で『やずライフ』というインスタグラムのアカウントを活用させてもらうことになったんですが、これだけSNSが発達した時代に、何をどう発信していくかを考えました。僕が、八頭の景色がいいですよ、と写真を撮ったとしてもそんなに広がらないなって」

 

出会ったのが、町の観光協会で「目が合った気がした」という「やずぴょん」のぬいぐるみだった。

 

「『やずぴょん』を主役にして、いろんな場所におでかけしてもらい、ふざけていたり、楽しんでいたりするのがいいなと。僕はそれを見て笑っていたいし、見てくれる人も親しんでくれるうちに八頭町のことを知るようになるのが理想です」

 

ある夏の日には、芝生の水撒き機の動きがおもしろいと感じ、そこに「やずぴょん」を乗せてビデオを回したことも。撮影は、宣伝になりすぎないもので、日常の中で心にとまったものにしている。

 

「例えば、家を出る時に道にフキノトウを見つけるじゃないですか。そうすると、それを見て、あぁ春が来たなって思うんですね。それを『やずぴょん』を使って撮影することができる。NHK時代は、テレビで流す上で情報性の高いものを探す意識だったのが、自分が感じたことを届けようと思うようになりました。テレビでなくても、情報性のないものをやっている感覚は全くありませんし、やりがいがありますよ」

 

地域の小さなお祭りでも、春の訪れでも。

同じものを見ているようでも、新しい景色が広がった。

ここでできることを耕していく

情報発信だけでなく、仲間たちと移住促進に関わる仕事も始めた。

 

一般社団法人「Yearning for Yazu Project」(通称YYP)を立ち上げ、八頭町に憧れを持ってもらい、住みたいという人を空き家とつなげていく取り組みをしている。昨年9月には古民家をDIYで改装し、「くるくる」という拠点を整備。ここで町の移住定住センターの窓口業務も受けている。

 

「うちは本当に運良く古民家にすぐ住めましたが、鳥取に帰りたくても家がないとそういう需要を取りこぼしてしまう。それはもったいないと思うんですね。町のことを知っていくうちに、そういうことも思うようになりました」

 

この町で自分に何ができるだろう。そう考える時間は少なくない。地域おこし協力隊を卒業した後、何をしていくだろう、とも。もちろん不安がないわけではないが、ただ、どこか信じている自分もいる。

 

「腐らず、一生懸命やっていたら誰か見てくれていると思うんです。他力本願ではないですが、そういう巡り合わせはきっとある。僕は自分にやれることをやろうと思います。自分の道を耕していかないといけないなって思いますね」

 

最後は、ご家族に集まってもらって遊んだり、時間を過ごした。

のびのびと、自由に遊ぶ子供たち。笑顔の実穂さんと中村さん。

その景色は、とても穏やかだった。

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機械仕掛けのゆるキャラ・やずぴょんのお出かけ日記です。鳥取県八頭町をぴょんぴょん動き回っています。雨に降られても、泥に汚れても、今日もぴょんぴょん
※地域おこし協力隊でもあります
yazukanko.jp

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