Tottori diary

楽しみながら、暮らしも、仕事も自分でつくる。|黒崎大

黒崎大

PROFILE

兵庫県神戸市出身。銀行員を経てファイナンシャルプランナーとして独立。コロナ禍に、地方で暮らすことを考え、母の地元である岩美町に移住。地域おこし協力隊として町の魅力発信に努め、現在は「TEN FORWARD」の屋号で、ゲストハウス「TEN」の経営とクラフトビール「IWAMI BLUE BEER」の製造販売を行う。

「母の田舎なので、岩美には小さい頃からよく遊びに来ていました。夏の海水浴が楽しかったですね。よく二人で散歩がてらこうして海にも来るんです」

 

1年半前にオープンしたゲストハウス「TEN」から歩いて数分。東西になだらかで美しい曲線を続く浦富海岸の砂浜に着いた。波打ち際で写真を撮る黒崎さんが「押すなよ、押すなよ」と言うと、「絶対に押すなよ、というフリのやつやろ(笑)」と妻の香織さん。

 

とにかくよく笑う夫婦。兵庫県でファイナンシャルプランナーをしていた頃に出会ったという二人。今、暮らしも仕事も自分たちらしく楽しんでいることは、仲睦まじい様子や笑顔を見ればわかる。

岩美町に移住。地域の魅力発信を仕事に。

いつか自然豊かな地方でのんびり暮らしたい。

そんな夢に一歩踏み出すきっかけは、予期せぬ感染症の流行でやってきたが、「(ファイナンシャルプランナーの)仕事もオンラインでどこにいてもできるし、いいタイミングかも」と前向きだった。

 

移住先の地域に役立つことがしたいと、地域おこし協力隊を検討。四国や関西圏でも探していたところ、香織さんが「岩美って募集してないの?」と提案。遊んで楽しかった記憶と豊かな自然風景が蘇った。

 

地域おこし協力隊としては「道の駅きなんせ岩美」で町の魅力発信を担当。

ここでもこれまでに培った能力を発揮することになる。

 

「職業柄、潜在化している課題を見つけて解決していくのが仕事だったので、目に見えるものに課題を落とし込むことはしやすかったかもしれません」

 

まず手をつけたのが、日本棚田百選にも選ばれた「横尾棚田」のお米。特産品として売り出したいが、売り上げに悩んでいた。

 

「僕自身が旅行先でクラフトビールを飲むのが好きで。お米を使ったビールをつくろうと考えました。広島の醸造所に頼んで、岩美の海の青さと、山の碧。両方の意味を持つ『いわみ碧(ブルー)ビール』が1年目にできました」

 

その後も、アイデアと実行力で次々に新しいプロジェクトを立ち上げる。

2年目には、サイクルルートに合わせたカフェを利用してもらうサイクルツーリズムを考え、3年目には親ガニのカレーを夫婦で考案した。

DIYで自宅からゲストハウスまで

この日の取材でもコンポストを自作していた黒崎さん。「ないものは自分で作る」スタイルは、岩美町の母方の血筋だという。

 

「ひいおじいちゃんは大工で、初めてのスキーはおじいちゃんに作ってもらった竹スキー。小さい頃からものづくりは好きでした。母も自分がつくるものに厳しく、小学生の頃に泣きながら釘を打って工作を作った記憶があります(笑)。でも、それが今に生きるとは…」

 

自宅も自分で改修していて、クラフトビールの醸造所を探していた時にたまたま友人が買って使っていなかった古民家を見学。2階の窓から見ることができる日本海の景色に一目惚れ。香織さんと同時に、「醸造所だけにするのはもったいない。これは宿だな」と直感した。

 

そこからDIYのゲストハウスづくりが始まった。YouTubeを見ながら、見様見真似で天井を抜いて断熱材を仕込んだり、就寝スペースの小上がりを作ったり、無垢のフローリングを貼ったり。夫婦で試行錯誤の末、2022年夏にゲストハウス「TEN」がオープンを迎えた。

 

「今年は酒税の製造免許もとって、8月からはビールの販売もスタートしました。二人とも食べることや料理が好きなので、ゆくゆくは今の車庫スペースをカフェにしたいなぁ、と思っています」

 

やりたいことは、どんどん広がっている。

暮らしの豊かさを感じながら

岩美に来て、いろんなことが新鮮だという二人。

田後漁港の近くに住み、大家さんが底引き船の船頭。今シーズンは親ガニを60杯はもらった、と笑った。

 

「いろんな魚をいただきますね。カレイ、沖ギス、ハタハタ、赤エビ、ホタルイカ…。朝、ゴミ出しに行って、帰りにカニを握って帰るなんてこともありました」

 

暮らしの延長線上に、仕事があるような生活。

ビール造りも地域に結びつけた商品づくりを心がけている。岩井地区に自生しているユズを協力隊仲間が教えてくれ、獲りに行ってユズビールができたし、梨農家さんから天候不良で規格外の梨があると聞けば、買い取って梨のビールを造ってみた。

 

「のんびりするつもりが気づいたら忙しくなっていた(笑)。まぁ、二人でできる範囲で、ちょっとでも岩美の役に立っていたら嬉しいです」と黒崎さん。

 

移住当初から、二人の移住暮らしを楽しんでもらおうとYouTubeでも発信。1回目の動画が18万回再生され驚いた。香織さんも岩美が気に入っているそう。

 

「こっちに来て4年になるけど、いまだに毎日海を見ていても飽きない。そういうことや、とにかく食べ物が美味しいから料理のことも発信していきたい。やっぱり静かでいいなぁ、ここは。関西は音が多すぎてもうしんどい(笑)。大阪の友達がこっちに来た時、鳥の声を聞いて『どこのスピーカーから流れてるん?』って聞いて笑いましたよ」

 

ゲストハウスのお客さんがチェックアウト後に、静かな二人の時間がある。

波の音、鳥や虫の声しか聞こえてこない。のどかさに身を置いて、二人でしみじみ思う。

 

「最高やなぁ」

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IWAMI BLUE BEER & Guest House TEN

TEN FORWARD /日本一小さなDIY醸造所と浦富海岸まで徒歩3分一日一組貸切のゲストハウスを営むアラフィフ夫婦

2020年8月に兵庫県尼崎市から鳥取県岩美町に移住

#とっとりdiary インフルエンサー

2020年夏。アラフィフ夫婦と猫4匹で田舎の小さな鳥取県岩美町の漁師町に移住しました。

Interview
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とっとり来楽暮

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