移住者インタビュー

住みよい場所、暮らしをつくる

#{tags}

「大山町は見晴らしがよくて、人が少ないのがいいですね。家が海沿いなのでほぼすべての窓から海が見えるんです。」

そう話すのは小林このみさん。大山町にある旦那さんの実家からのラブコールを受けて、2歳と3歳になる子どもと共に10年前に岡山から移住してきた。現在は8歳から87歳までの9人4世代で暮らす。

00_にこやかにたくさんお話してくださった(左が小林さん).jpg

にこやかにたくさんお話してくださった(左が小林さん)

思っていたのとは違った大山町での生活

 以前住んでいた岡山県は鳥取県とは中国山地で隔てられた「晴れの国」と呼ばれる、温暖で降水量の少ない地域である。対して、鳥取県は一年を通して曇りや雨、雪の日が多く、冬の寒さは厳しい。そのため、移住してきた当初は冬が憂鬱だったという。

01_泥だらけになってサツマイモを収穫.jpg

泥だらけになってサツマイモを収穫(小林さん提供)

大山町は海と山が両方そろった自然豊かな土地だったこともあり、子どもたちが自然の中で泥だらけになったり、虫を捕まえたりして遊ぶことを想像していた。しかし実際は都市で暮らす子どもと同じような遊び方やライフスタイルだった。人口が少ないため、近所の公園には同じぐらいの子どもはおらず、自然の中で遊ぶ機会もなかったそうだ。

自らの手で子どもたちの遊び場を

そこで、小林さんは以前暮らしていた岡山にはあった、子どもが自然の中で思いっきり遊べる場所「冒険遊び場きち基地」を地域の協力を得て一から作った。「冒険遊び場」とは子どもが“遊びをつくる”場で、木に登ったり、落ち葉などの自然の素材を使って工作をしたり、のびのびと思いっきり遊ぶことで生きる力を育む場である。「子ども食堂」のように、このような子どもの遊び場の総称だ。

02_子どもたちにとっても親にとっても楽しい時間に.jpg

子どもたちにとっても親にとっても楽しい時間に(まぶやHPより引用)

たまたま「やらいや逢坂」という、コミュニティスペース「まぶや」を拠点に活動するまちづくりを担う組織が出来てすぐの頃で、そこに「こんなことがやりたい」と話をもちかけてやらいや逢坂の活動として「きち基地」やらせてもらったのが始まりだという。
 自分のやりたいことが地域の活動となり、小林さんは集落支援員として、やらいや逢坂の事務局の仕事にするようになった。岡山に住んでいたころは事務職、衣服販売、福祉関係の職と、それぞれ1年程度で転職し、長くは続かなかったそうだ。しかし、今の集落支援員の仕事は続けられている。その理由を、

「仕事内容と働き方が自分に合っていて、仕事とモチベーションがフィットしているから。」

と話す。仕事と生活、自分のやりたいこと、この3つの中心にやらいや逢坂での活動があり、小林さんはとても充実した日々を過ごしている。

03_コミュニティ拠点「まぶや」 小林さんはカフェのスタッフとしても活躍.jpg

コミュニティ拠点「まぶや」 小林さんはカフェのスタッフとしても活躍

集落によっても異なる大山町の暮らし

 これまでは仕事に焦点を当ててきた。では、大山町での生活はどのようなものなのか。
 小林さんが住んでいるところからは、車ですぐの場所にスーパーやドラックストアがあり、生活必需品は一通りそろえることが出来る。生活する上で困ることはあまりない。た、大山と言えばスキー場だが、町民は高校生まではリフト券が無料とスキー好きにはうれしい特典があるなど、住んでいるからこそ味わえる良さもある。
 もちろんマイナスなこともある。大山町内には小学校4校、中学校3校と少ない。だいたい大山町と同じくらいの面積の徳島市には小学校が約160校、中学校が約80校ある。高校は町内にはないため、町外の高校へ通うことになる。教育の選択肢という意味では少ない。
 ひとえに大山町といっても集落ごとにその特徴は様々であるそうだ。小林さんが所属するのは、おすそ分けは日常的で、持ち回りのゴミ捨て場の掃除、年末年始の寄り合いなど比較的地域のかかわりが深い集落だ。逆に、団地がある集落だと、都市での希薄な近所づきあいとあまり変わらないようだ。

04_集落によってご近所との付き合いの深さも違う.jpg

集落によってご近所とのつきあいの深さも違う

どんなライフルタイルを組み立てるのか

 小林さんは「どこに住むかも大事だけど、どうゆうライフスタイルを組み立てるかも合わせて考えるからこそ移住の意味があると思います」と話す。

移住を考えている人は、どこに住むのか、とどういう風に暮らすか、どちらが先かは人によると思うが、集落の雰囲気を事前に知っておくことが自分の望む生活をするうえで非常に重要である。例えば、自然が好きで休みには身近なところでアウトドアを楽しみたいが、生活上でのご近所づきあいはほどほどにしたい人は付き合いの少な目な集落や団地。地元の住民との付き合いも楽しみ、地域に関りながらクラスのも良いという人は集落付き合いが多い集落に住むなど、実現したいライフスタイルと地域の生活文化がマッチしていることが大切だ。大山町だけで言うと、このような集落ごとの特色は「まぶや」の移住定住サテライトセンターで知ることが出来る。

 自ら進んで選択したわけではない大山町への移住。しかし、自ら行動し続けることで自分が住みよい場所に変えていく。それを体現している小林さんの生き方は、現在大学生の私にはとても輝いて見えた。お話を聞く中で大山町での生活は大変なことも多いと感じたが、それ以上に、わくわくする場所だと思った。冒険遊び場がなかったように、大山町は未開拓の部分が多い。何か新たな挑戦をするために移住をするのも人生の選択の1つなのではないだろうか。

06_大山暮らしのリアルを自然体で話してくださり、思わず前のめりに.jpg

大山暮らしのリアルを自然体で話してくださり、思わず前のめりに