ガーデンショップ「OZ GARDEN(オズ ガーデン)」で庭の手入れをする遠藤佳代子さん。手描きの設計書で庭造りを提案し、果樹生産も手がけている。「OZ GARDEN」はオズの魔法使いのオズがシンボル。
「OZ GARDEN」http://www.oz-gardener.com/
庭造りから自然を楽しむ花と緑のまちづくり
「山があって川があって、花御所柿の風景も八頭町のいいところ。人も温かく、暮らしやすいです」そう話すのは、八頭町にある遠藤農園のガーデンデザイナー遠藤佳代子さん(53歳)だ。八頭町生まれだが、都市部への憧れから県外へ進学。
20代初めに姉の付き添いでカナダのウィスラーを訪れたことがきっかけで、「ここに住みたい!」と仕事を辞め、ワーキングホリデーで1年間カナダに滞在した。
「山や湖など、広大な自然のなかで、若い人たちが自然とともに暮らしていて、ガーデニングや自然の楽しみ方を日本でも広めたいなと思いました」 偶然にも実家は祖父の代から続く造園業。自然で遊ぶことは八頭町でもできると地元に戻り、働きはじめた。造園の仕事は現場で学び、得意なイラストを生かしながら庭の設計を手がけている。
転機は2013年に鳥取市で開催された「第30回全国都市緑化とっとりフェア」だった。事務局の仕事を引き受け、イギリス人のガーデンデザイナーでナチュラルガーデンの第一人者ポール・スミザーさんに出会った。
肥料や農薬を一切使用せず、植物が本来持っている力を活かした、環境に優しい庭造りの手法を学び、その場所に合った植栽を提案するようになった。遠藤農園が指定管理している船岡竹林公園は実践の場の1つ。園内で剪定した木や草を使った、虫の棲み処「バグ・ホテル」をつくるなど、多様な生物が棲む自然豊かな環境を育んでいる。
ナチュラルガーデンの普及に取り組むNPOの代表を務め、国道29号沿いの魅力を発信する「R29活性化委員会」でも長く活動している遠藤さん。今後は実のなる木の需要を増やしたいと、穫れたてのフルーツでドリンクを提供するカフェも計画中。
鳥取の自然を活かした庭造りを軸に、ワクワクすることを生み出していく。
国内外の珍しい竹と笹が生い茂る国内有数の船岡竹林公園で。2023年にポール・スミザーさんを講師に、「バグ・ホテル」にもなるウッドベンジを完成させた。
現在は、母の遠藤禮子さん(左)が会長、姉の小山由香さん(中央)が社長を務める。遠藤農園を一緒に盛り上げている。
八頭町(やずちょう)
鳥取県東部に位置する人口約1万6000人の町。町の中心を若桜(わかさ)鉄道のレトロな観光列車が走り、豊かな自然と懐かしい原風景が残る。特産の「花御所柿(はなごしょがき)」はほとんどが八頭町で生産されているほか、ナシ、リンゴなどの栽培も盛ん。県庁所在地の鳥取市に隣接。大阪駅から郡家(こおげ)駅まで特急利用で約2時間20分。
お問合せ:八頭町企画課地域戦略室 ☎0858-76-0213
宝島社発行「田舎暮らしの本」2024年2月号掲載