由良駅の近くに「民泊MOKUBA」をオープンした、若狭春奈さん。
玄関にかけられた木馬ののれんが目印。
人気アニメをきっかけに作者の出身地に移住
人気アニメの聖地として国内外から観光客が訪れている北栄町。
作者の出身地であることから、町のなかには30体ものキャラクターオブジェや案内板が設置され、漫画の原画や資料を展示した施設や作品の世界観に触れながら食事や買い物ができる複合施設、アニメにちなんだラッピング車やタクシーなども多くのファンを楽しませている。
2022年に秋田市から北栄町に移り住んだ若狭春奈さん(40歳)も、この作品に魅了された1人だ。
「テレビアニメが始まった1996年からずっと好きで、生活の一部になっています。主人公が子どものからだになってしまうという設定や、しっかりとしたストーリー、サスペンスとSF、現実と非現実がいいバランスで描かれているところが魅力だと思います。鳥取県に来たことはありませんでしたが、アニメの聖地であることは知っていて、北栄町に住みたいなと思っていました」
オンラインの移住相談で、北栄町に地域おこし協力隊の募集があることを知り、移住を決意した。協力隊として2年間、北条砂丘にある北栄ドリーム農場でイチゴの栽培に取り組んだ。
その間も、作者のトークショーに参加したり、期間ごとに変わる原画の展示を見に行ったりして楽しんでいた。
観光客をもてなす1日1組限定の宿を開業
農業が盛んな北栄町では就農を目指す協力隊が多いなか、若狭さんは北栄町を訪れる観光客をもてなしたいと、民泊の開業を計画。
「初めて北栄町を訪れたとき、泊まれる宿が見つからず隣の倉吉市に滞在しました。観光客が多いのに町内には宿泊施設が少ないので、民泊があったらいいなと考えたんです」
協力隊の活動の合間に空き家を探し、駅にも関連施設にも近い好立地の物件を空き家バンクで見つけた。24年4月には協力隊を辞め、本格的に開業準備に取りかかった。
2階の住居部分はDIYが得意な協力隊に手伝ってもらい、1階の客室は自らふすまにシートを貼ってリメイク。町の創業支援事業補助金やクラウドファンディングを活用して、7月に「民泊MOKUBA」をオープンした。
「民泊MOKUBA」の1階の客室は8畳の広さで4人まで利用できる。ふすまはレンガ柄のシートを貼ってリメイクした。
オプションでアロマクラフトワークショップを実施。「アレルギー体質なので、化粧品は自分でつくっています」と若狭さん。
宿泊客のお弁当をお願いしている「cafe no― ― ―ka(カフェノーカ)」のオーナー池口小春さん(左)と。
カフェでのランチもおすすめ。
地域おこし協力隊仲間でブドウづくりに取り組んでいる前 綾美さんは、いろいろ相談できる仲。
試しに泊まってもらい、アドバイスをお願いしたこともある。
北栄町(ほくえいちょう)
鳥取県中部に位置し、人口は約1万4000人。南部は倉吉市と接して中国山地に続く高地となっている一方、北部は日本海に面する東西約12・5㎞におよぶ砂丘海岸となっている。
豊かな自然を活かし、スイカ、長イモ、ラッキョウ、ブドウなどの栽培が盛ん。
羽田空港から鳥取砂丘コナン空港まで約1時間20分、鳥取空港から町中心部まで車で約1時間。
宝島社発行「田舎暮らしの本」2025年2月号掲載