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海辺にサーフショップ「COCO BLUE SURF」をオープンした田中千春さん（左）。
サーフィンスクールやボードなどの販売、レンタルをしている。Instagram：@cocoblue.surf
「鳥取ふるさとＵＩ（友愛）会」の竹本会長（右）もサーフィンスクールの生徒の一人だ。
サーフィンを楽しめる海に近く住みやすいまち
サーフィン歴が長く、２０代から趣味でサーフィンを楽しんできた田中千春さん（４２歳）。
両親の高齢化を理由に６年前に神奈川県から兵庫県宍粟市山崎町に帰郷したが、サーフィンを続けたいという思いから２０２０年に鳥取市へ移住した。
「高校卒業後は東京の専門学校へ進学し、そのまま都内の会社に就職しました。運動不足解消にとサーフィンスクールに通うとすぐにのめり込み、３カ月後には海に近い神奈川県・湘南に移り住んでいました。鳥取市も海がすぐそばにあって生活しやすいところが、１０年暮らしていた湘南と似ています」
サーフィンのできる海岸が多くある鳥取市は、関西を中心に県外のサーファーにも人気が高い。
田中さんも兵庫県に帰郷してからは、車で約1時間かけて鳥取の海へ毎週末通っていた。
そのうちに住みやすそうだと感じ、実家にもすぐに帰省できることから、インターネットで賃貸物件を探した。
「鳥取市に住みはじめてサーフィンで何か仕事ができないかと考えていたところ、よく行く海岸近くの宿泊施設のオーナーからサーフィンスクールをやってほしいと声をかけられました。その後、知り合いを通して海沿いの空き家を改修して店舗を持つことができ、サーフィンが仕事になりました」
移住する前は会社員だったため、開業の経験はなかったが、商工会議所などに相談し、個人事業主としてサーフショップの経営に挑戦。２２年に「ＣＯＣＯ ＢＬＵＥ ＳＵＲＦ」をオープンした。午前はサーフィンスクール、午後は店でボードやウェットスーツなどの販売やレンタルをしている。店舗を構えたことでサーフィンスクールの利用者は順調に増え、初心者でも手ぶらでサーフィンを始められる環境が整った。
店名の「COCO」は、ハワイ語で人とのつながり。女性も気軽に立ち寄れるようにと、かわいいアイテムを揃えている。サーフィンにも活かせると続けていたヨガは、インストラクターの資格を取得。店内や近くの公民館などでヨガのレッスンも開いている。
ヨガスクールのインストラクターもしている田中さん。ヨガで培った柔軟性や呼吸法はサーフィンにも活かせるそうだ。
波を見極めて乗ることがサーフィンの面白さ。「その瞬間しかない、いい波に巡り合えると記憶にずっと残るんです」。
接客中の田中さん。店内は、気軽に立ち寄りやすい明るい雰囲気。サーフィンに使う小物や水着の販売もしている。
移住者コミュニティで毎月ワインバーを開く
２４年の春には、鳥取県東部へＵターン、Ｉターンした移住者コミュニティ「鳥取ふるさとＵＩ（友愛）会」に入会した。ＵＩ会は移住者も地元の人も入会でき、会員数は約５０人。最近、サーフィンを始めたという竹本剛会長の勧めで、月に数回、市街地の空き家でワインバーを開いている。
毎回、田中さんのオススメのワインを７本くらいと、ナッツなどのつまみを用意して、お客さんをもてなしている。ＵＩ会では、年間を通していろいろなイベントを行っている。田中さんも季節のイベントを楽しみ、サーフィン仲間以外にもさまざまな交流が増えたという。
「移住してよかったことのいちばんは、県内にサーフポイントがいっぱいあること。また、買い物をする店も飲食店も海も、移動距離が少なくてすむので、暮らしやすいです。今後は県内外から多くのお客さんに利用してもらえるよう、ＳＮＳなどで鳥取の海の魅力を伝え、お店をがんばっていきたいです」とほほ笑む。
波がよければ、毎日でも海に入るという田中さん。市内にはサーフィンの帰りに立ち寄れる温泉や飲食店も多くあり、楽しみは尽きない。
２～３年前からワインが好きになった田中さん。
さまざまなワインを用意して毎月ワインバーを開く。UI会の人やサーフィン仲間も訪れている。
鳥取市（とっとりし）
鳥取県東部に位置する人口約18万人の県庁所在地。鳥取砂丘など恵まれた自然と温泉が身近にあり、医療機関や商業施設も充実。サーファーも訪れる白兎（はくと）海岸は『古事記』に記される日本神話「因幡の白うさぎ」の舞台になっている。
羽田空港から鳥取砂丘コナン空港まで約1時間15分、大阪から車で約2時間30分。
宝島社発行「田舎暮らしの本」2025年4・5月合併号
