東郷湖の湖畔にあるカフェ「HAKUSEN」は好きな場所の1つ。「夏はよく海にも行きました」と愛実子さん。
作家活動ができる環境で昔ながらの農的生活
木工彫刻の作品を制作する中川亮二さん(28歳)と陶芸作家の愛実子さん(30歳)夫妻は、自然に近いところで畑や制作をして暮らしたいと2020年7月にそれぞれが住んでいた京都と大阪から湯梨浜町に移住した。
「旅行で鳥取を訪れて、倉吉市のお試し住宅に3カ月間暮らしながら、空き家バンクで賃貸の家を探しました。湯梨浜町は、カフェの『HAKUSEN』や本屋の『汽水空港』、ゲストハウスの『たみ』など、若い人たちがやっているお店があって、文化的な活動も多い。山奥に住む自信はないけれど、近くに楽しそうな人たちがいるところなら暮らしていけそうかなと」と亮二さんは移住のきっかけを話す。
自宅は、東郷湖沿いの道から少し山側へ入った集落の奥にある空き家を1年半借りたのち、その家を購入した。自分たちで壁と床をすべてはがし、木と土が見えるぬくもりのある家に改修。
廃材を薪に活用するため、台所には土を盛ってかまどを自作した。畑では季節の野菜を育てながら、ニワトリを放し飼いにし、ネコも飼っている。畑の真ん中にある1本のネムノキと山が広がる景色は、田舎に憧れていた愛実子さんのお気に入り。
2人で制作の作業ができるガレージもある。 作家として活動する2人のユニット名は「フベン」。
「便利さにとらわれない、人の手によるいびつさを取り入れた暮らしのなかで、土と木が人間の生活に近い素材だと実感し、生活のための陶器と彫刻をつくっています」(亮二さん)
今年5月には長女の寧子ちゃんが生まれ、3人家族に。今後は、農に向き合いながら自給率を上げ、自宅2階には作品を並べるギャラリーもつくりたいと理想の暮らしを思い描く。
「昔の農作業中心の生活のように、種を蒔いて世話をする日々を、できるだけ3人で一緒に楽しんでいきたいです」(亮二さん)
雑誌の取材を受ける中川さん夫妻
湯梨浜町(ゆりはまちょう)
鳥取県のほぼ中央に位置し、北は日本海に面する人口約1万6000人のまち。山陰八景の1つとして数えられる東郷湖(とうごうこ)の湖畔には「はわい温泉」と「東郷温泉」があり、日本一の産地である二十世紀梨をはじめ、ブドウ、イチゴ、スイカなどの果物や、天然岩ガキといった海の幸にも恵まれている。羽田空港から鳥取砂丘コナン空港まで約1時間15分、鳥取砂丘コナン空港から湯梨浜町まで車で約40分。
お問合せ:湯梨浜町デジタル・みらい戦略課
☎0858-35-5306 https://uu-yurihama.jp/
宝島社発行 「田舎暮らしの本」 2023年12月号掲載