定年後の有意義で楽しい暮らしを求めてUターン
かつてはたたら製鉄で栄え、城下町や宿場町の文化が残る人口約2700人のまち日野町は、山間部の谷間に集落が広がり、特産品のシイタケ栽培などの農業も盛んだ。
佐々木良明さん(65歳)は、定年を機に2021年9月、大阪から故郷の日野町へUターンした。
移住の理由を次のように振り返る。
「60歳を前に今後の生活を考えはじめ、日野町で暮らすほうが有意義で楽しいかなと思ったんです。日野町には母が住んでいて、いずれは弟家族も戻ってくる予定。古くからの友人が多く住んでいるのもうれしいです」
「住舞留」で地域住民と談笑する佐々木さん(右)
現在は母親と2人暮らしだが、近くに家を建てようと計画中。
仕事は菅福地区の集落支援員に応募し、2022年4月から上菅駅前の「小さな拠点・住舞留」に常駐している。住舞留は、地域の人が集まる憩いの場兼カフェスペース。多い日は30人ほどが利用する。
佐々木さんが飲み物を用意している間に、利用者が募金箱にお金を入れるシステムで、お茶を飲みながらおしゃべりをして過ごすのが日常だ。
菅福地区のよさは住民同士の結束が強いところと話す佐々木さん。都会に暮らしていたときよりも住民と関わる機会が増え、地域の活動にも参加している。
「地域にはいろんな方がいて楽しいです。ここでのおしゃべりがきっかけで昨年10月には小さな花火大会を実施しました。『除雪隊』を結成して雪かきをしたり、伝統行事を復活させたり、若手が少なくてできないことを支援して、皆さんの生活が豊かに維持できるよう取り組んでいます」
周辺の農家から野菜をいただく機会も多く、いただいた野菜で料理をつくることも楽しみの1つ。
今後は地区でつくっている豆腐や味噌、米などの特産品を活用して、いろいろなものがある地域にしていきたいと話す。
「高齢者が多く、人口も徐々に減ってきていますが、町外に出た人がまた帰ってきたいと思える地域にしていきたいです。活動を通じて住民同士が元気に支え合い、私も地域の発展に関わっていけたら」と、まちの活性化に励んでいる。
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看板はなく、のぼり旗が目印。
佐々木さんが常駐しているので、毎日立ち寄ってくれる方もいる。
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「住舞留」入口
日野町(ひのちょう)
鳥取県の南西部に位置し、南東部は岡山県に隣接。町の中央を流れる一級河川の日野川は、秋から冬にかけてオシドリが多数飛来。野鳥観察やアユ釣り、ラフティングなどが楽しめる。歴史、文化にも恵まれ、金持(かもち)神社は縁起のよいパワースポット。羽田空港から米子鬼太郎空港まで約1時間15分、米子鬼太郎空港から日野町まで車で約1時間15分。
お問合せ:日野町企画政策課
☎0859-72-0332
https://www.town.hino.tottori.jp/2465.htm
宝島社発行 「田舎暮らしの本」 2023年11月号掲載