UターンしてSNS映えカフェを開業
「齧珈琲」の前で、後藤さん(写真右)と西村さん。
お店は国道9号沿いにあり、ここを目当てに訪れる町外の客がほとんどだという。
左が生クリームラテの抹茶、右がほうじ茶(各650円)、中央は食べる生クリーム(750円)。※価格は取材当時
生クリームは「大山乳業」、抹茶は「井上青輝園」と地元産を使用。
「うちのカフェは、写真を撮って楽しんでほしい」と話すのは、2023年3月にオープンしたばかりの「齧珈琲(kazy coffee)」を経営している後藤 翔さん(26歳)だ。
大山町は、町名にもなっている大山があり山のイメージが強いが、豊かな日本海にも面している。
御来屋漁港は、小さいながらもサザエの水揚げ量県内一を誇る。
「齧珈琲」は、御来屋地区にあり、海まで徒歩3分ほど。後藤さんと共同経営者の西村太一さんは、もとは大阪の不動産関連の会社に勤めていた。
コロナ禍で生まれ育った大山町に帰った後藤さんは、「故郷っていいな」と戻ることを考えはじめた。
「僕はコーヒーが好きで、京都の町家カフェをよく巡っていました。西村は、京都の料亭で修業した経験があるので、カフェができると思ったんです」
古い長屋を購入して、できるところは自分たちで改修。厨房機器は中古を探した。開業に際しては、「鳥取県地域課題解決型起業支援補助金」で150万円の補助を受けることができた。
「その際には、大山町の商工会の方にいろいろと教えてもらい、本当に助かりました」
こだわったのはSNS映え。
お店の前には大きな青い幕がかかり、店内には商品を置いて写真が撮れるコーナーや、抹茶茶碗を飾ったイートインスペースなど、フォトスポットがたくさん。商品も特徴的で、メインは生クリームを使用したラテまたはティラミス。抹茶、ほうじ茶、エスプレッソなどがあり、生クリームをカスタムできる。
「自然が豊かで、食べ物がおいしくて、空気と水がきれい。住む家や働く場所は少ないですが、やはり大山町に戻ってよかったです」と話す。
今後は、カフェを軌道に乗せ、SNSを教えたり委託を受けたり、開業のために勉強したことを活かした仕事をつくっていきたいと話す。
「僕たちは、まだまだ未熟者。だから失敗は怖くありません。それが僕たちの強みですね」と目を輝かせる。
「開業してみると難しいことだらけ」と話す後藤さんは、考えごとがあると御来屋の海辺を散歩する。
大山町(だいせんちょう)
名峰・大山と日本海に挟まれた大山町は、豊かな自然に恵まれ、山と海の両方が楽しめる。農業、漁業、畜産業などが盛ん。
「大山町移住交流サテライトセンター」では移住者でもある移住アドバイザーが、町と協力して空き家情報の発信や移住相談などを行っている。
羽田空港から米子鬼太郎空港まで約1時間15分、米子鬼太郎空港から大山町まで車で約40分。
お問合せ:大山町企画課 ☎0859-54-5202
https://www.daisen.jp/1/c337/
宝島社発行 「田舎暮らしの本」 2023年10月号掲載