八頭町の人気スポット「はっとうフルーツ観光園」で、農園の人から教えてもらいナシ狩りを楽しむ。
「ナシの食べ比べができるのは贅沢ですよ」と聡志さん。右から、聡志さん、長男の智皓(ちひろ)くん(4歳)、次男の元(はじめ)くん(1歳)、実穂さん、長女・芽生(めい)ちゃん(6歳)。
コロナ禍で移住を決断。理想を求め八頭町へ
コロナ禍で地方へ移住する人が増えている。鳥取県八頭町の地域おこし協力隊として着任した中村聡志(さとし)さん(38歳)もその1人。NHKのディレクターというキャリアをリセットし、2021年に家族5人で新たな暮らしをスタートさせた。
神奈川県に住み東京・渋谷に通勤していた聡志さん。地方移住のきっかけは、コロナ禍が始まった20年、妻・実穂(みほ)さんが3人目を妊娠したことだ。
「私の実家は大阪府で、妻は香川県。緊急事態宣言下で親族のサポートも受けられない状況で、仕事や育児のことを考えると将来が不安でした」と振り返る。
コロナ禍以前から、聡志さんは一家で大都市を離れて別の仕事をすることを考えていた。
新たな出発地として選んだのは、聡志さんの最初の赴任地だった鳥取県。八頭町に決めたのは、現在住んでいる古民家との出合い、聡志さんが自ら企画提案できる地域おこし協力隊に就任したこと、そして子どもを自然保育の園に通わせたいという、3つの理想がすべてかなえられるからだった。
じつは中村家の上の子ども2人は鳥取市生まれ。鳥取市に近い八頭町は「妻も、当時のママ友がいるという安心感がありました」と聡志さん。
八頭町で暮らして1年半。「古民家なので虫が出るし、冬はすき間風で寒い。ただ、玄関を出たらホタルや天の川が見えるんです」と、自然を五感で感じることは、今や日常になった。「八頭町が子どもたちの故郷になるようにしていきたい」と聡志さんは話す。
住まいは築100年近い古民家。夏でも格子戸を開放すれば天然の風で快適だ。1階はLDKにリフォームされ、全部で4部屋、夫婦と子ども3人でも充分な広さだ。
認定こども園「空山ぼくじょうようちえん ぱっか」。牧場と園が一体化していて、ポニーと触れ合える。
毛のブラッシングや蹄のケアなども、子どもが行う。ポニーとかかわり、自然のなかでさまざまな体験をすることが、子どもの自主性を伸ばすことにつながるという。
八頭町の大きな可能性。独自の切り口で魅力発信
聡志さんの仕事は町の情報発信。八頭町マスコットキャラクター「やずぴょん」を活用し独自の切り口で町の魅力を発信している。仕事で広げた人脈で副業の動画制作も手がける。
八頭町に大きな可能性を感じている聡志さん。「八頭町に住んで、生産者の方と話し、田畑で野菜などの生育を直に見ることで、より豊かな食育ができるようになりました。私自身も資源循環への関心が高まりました。八頭町の景色や伝統文化を深掘りすれば大きな魅力になります」。
町にはウサギを祀る「福本白兎神社」があり、ウサギで観光振興を図るプロジェクトに聡志さんも参加。「来年の干支は卯。『ゆく年くる年』に八頭町を取り上げてもらえたら」と話す。八頭町と聡志さん、飛躍の年への期待大だ。
聡志さんの仕事に欠かせないパートナー、八頭町のマスコットキャラクター「やずぴょん」。2人の活躍が八頭町のファンの増加と移住定住を促すに違いない。
聡志さんはインスタグラム「やずライフ」で町の情報を発信。「やずぴょんの視点で見せる」という独自の配信は、NHK鳥取放送局でも放送された。(写真提供:池田きざしさん)
21年11月には八頭町オンラインモニターツアーを行った。聡志さんは今年8月に大阪で開催された移住定住イベントにもゲスト出演し、積極的にリアルな八頭暮らしをPRする。
八頭町のここが好き
自宅近くを流れる大江川(おおえがわ)のプールのような水遊びスポット。
撮影で見つけました。水がキレイで夏はひんやり気持ちいい。子どもたちの絶好の遊び場です。
八頭町(やずちょう)
鳥取県東部、標高1000mを超える山々に囲まれた人口約1万6000人の町。特産の「花御所柿(はなごしょがき)」は国内唯一の生産地で、ナシ、リンゴなどの栽培も盛ん。県庁所在地の鳥取市に隣接。大阪駅から若桜鉄道郡家駅まで特急利用で約2時間17分。
移住相談員のよもやま話
小学校をリノベーションした「隼Lab. (はやぶさらぼ)」、1階はカフェやショップ、2・3階にはコワーキングスペースやシェアオフィスがあり、約40社が入居・入会しています。常駐マネジャーが地域と企業をつなぎ、新たな起業や協業も誕生。八頭町なら、新しい働き方を始められます。(八頭町企画課)
お問い合わせ:八頭町企画課地域戦略室
☎0858-76-0213
八頭町企画課地域戦略室の山田健吾さん。
宝島社発行「田舎暮らしの本」2022年11月号掲載