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移住者インタビュー

支援団体「こうふのたより」のサポートで移住を決意

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自宅1階のギャラリーには自作と師匠の陶芸家・藤ノ木土平氏の作品を飾る。朝さんが持つ作品「カイ」は、夕陽の海のなかへ帰る光を描いたもの。「私のテーマの龍にも関係しています」。

 

新しい物語を育むために山に包まれる場所に住む

「江府町は自然、人、仕事、すべてにおいて私と本当に相性がよいところです」と、穏やかな表情で話すのは画家の志水(しみず)(とも)さん(38歳)。神奈川県川崎市から移り住み、自宅も兼ねる古民家で作品制作にいそしんでいる。
 東京・築地生まれの朝さんは美大卒業後、広告代理店に勤めていたが、長時間労働や社内モラルなどに疑問を感じ32歳で退職。退職後の九州への旅で、唐津焼陶芸家・藤ノ木土(ふじのきど)(へい)氏と出会ったことが転機に。彼の作品である天女と、自身が旅先で見た神社から、絵筆で描く代表作「龍と天女の物語」が誕生。龍は朝さんのテーマとなった。
 川崎市に戻り作品制作に打ち込む傍ら、自分のなかの物語を育てるため、清流がある大きな山の麓の仕事場兼住まいを探した。北陸や四国を巡り、さらに鳥取を訪れようと計画していた矢先に緊急事態宣言が出された。すがる思いで江府町の移住相談窓口であるNPO法人「こうふのたより」に電話したところ、担当者からの「今できることから一緒に準備しましょう」という心温まる返答に励まされた。
 そして2020年夏、初めて江府町を訪れた。勇壮な奥大山、清らかな水に、ブナの森……。
 まさに山に包まれる感じで、私がイメージしていた理想通りの場所。また自分のことのように担当者さんが親身に対応してくださり、助かりました」
 担当者の人となりに移住を決心。その後も集落のしきたりから在宅仕事への周囲の理解に至るまで、献身的なサポートは大きな支えとなった。住まいは築約80年の空き家を購入し、地元職人の協力でリフォーム。21年5月、住まいとアトリエ、そしてギャラリーも備えた家で、2匹の猫と念願の暮らしが始まった。

 

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ギャラリー名「ちょう庵」は、訪れる人が穏やかな時間を過ごせる草庵になるようにと、師匠の藤ノ木氏が命名。「ちょう」は名前の「朝」(とも)を読み替えた。


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自宅裏には自然の木々や花が生い茂る。気が向けば自宅裏で花を摘み、それを器に挿して玄関やギャラリーに飾る。自然の“挿花”は一期一会でもある。

 

 

大切なテーマ「稚龍」を育てる町内での個展を構想中

「水と風の音、虫や鳥のさえずり、周囲の野の動物たち。街の音とは違う多彩な自然の音のなかにいると、集中力が高まります」
 画家の朝さんには、奥大山の「自然のにぎわい」は欠かせない存在。「アイデアは自然のなかにあります。細部までよく観察をして自分のなかにインプット。そうして、真っ白なキャンバスを前に浮かんできたものをとらえて描きます」。
 朝さんが描き続けている龍の物語「()(りゅう)」。その稚龍を育てるのに、感性が研ぎ澄まされる江府町は最適だったようだ。「江府町に来て、稚龍がのびのびと遊んでいるのを感じます」と笑顔を見せる。
 幼少のころから住まいを転々としてきた朝さんは、江府町を「一番落ち着く、根を張れる場所」と感じている。来年以降は町内での個展を構想中で、「古い分校と神社がある場所が気になっています」と語る。見る人をひきつけてやまない雄大な奥大山の麓で、朝さんは、鑑賞者の心が穏やかになる作品を生み出している。

 

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江府町は、清らかな小川が流れ、植生も豊か。朝さんは、いつも散歩しながらスケッチをする。「生活するにも仕事をするにも、江府町は私にとってベストな環境です」。

 

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2匹の猫は大切な弟のようなもの。「移住前から、里親を探している犬か猫を迎えると決めていました。古民家と猫は相性がよいですよ」。

 

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自宅玄関はギャラリーも兼ね、来客者との語らいの場。いつもお世話になっている「こうふのたより」の末次多衣子さんと筒井真理さんと、江府のおいしい水で朝さんが点てた抹茶を楽しむ。

 

 

江府町のここが好き

自宅から徒歩ですぐのところにある集落の古い御堂。


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集落を見守る神様と仏様の宿る御堂から制作のインスピレーションをもらっています。夕陽が入ると、格子窓が金色になります。

 

 

江府町(こうふちょう)

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鳥取県西部、秀峰・大山(だいせん)の南側に位置する人口約2700人の町。広大なブナの森から湧き出す美しい水と県内屈指の米どころとして知られる。羽田空港から米子鬼太郎空港経由で約2時間、大阪からは車で約3時間。

 

 

移住相談員のよもやま話

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500年以上続く江府町のお祭り「江尾十七夜(えびじゅうしちや)」。日ごろはほとんど人がいない通りには多くの露店が出現し、1万人以上の観光客がひしめきあう。ゆったりとした太鼓の音、もの悲しい唄に合わせ、編笠を目深にかぶった踊り手がゆったりと踊る……。関西の賑やかな盆踊りしか知らなかった私は、郷愁を感じて静かに見とれた。クライマックスは、久連山の「十七夜」の火文字と花火。ぜひ見に来てください。(江府町に移住した「こうふのたより」相談員)

 

 

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自然豊かな山間の町で暮らしてみませんか。移住後も全力で“寄り添う”サポートをさせていただきます。
NPO 法人「こうふのたより」の皆さん

お問い合わせ:江府町住民生活課 ☎0859-75-3223
お問い合わせ:NPO法人「こうふのたより」 ☎0859-72-3122

宝島社発行「田舎暮らしの本」2022年8月号掲載