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移住者インタビュー

開業と穏やかな日常。両方を手に入れました

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若桜町の新規創業支援も活用し、念願のデイサービス施設「いいひ若桜デイサービス」を立ち上げた野口賢一さん。「都会では難しかった理想の高齢者福祉サービスを目指します」。

 

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中国山地の山々に囲まれた若桜町。大小10の河川が町内で合流した八東川が山里を穏やかに流れる。

 

 

画一的なサービスではない介護事業が夢だった

 若桜鉄道の始発駅である若桜駅から徒歩約3分。風情ある蔵通り沿いに2021年9月、野口賢一(のぐちけんいち)さん(47歳)が思い描いてきた地域密着型の小規模デイサービス施設「いいひ若桜デイサービス」がオープンした。もともと野口さんは兵庫県加古川市で暮らしながら、介護事業大手に管理職として勤めていたが、もどかしさを感じていたという。
 「全国展開の介護施設だと、型にはまった安全ルールに縛られ、できないことが多いんです。また、収益性を高めるため、施設は都市部に集中。高齢化が進む田舎へ行って、シニアの方が在宅で長く過ごせる環境をつくりたいと考えていました」
 思いを妻に話すと賛同が得られ、移住先探しを開始した。若桜町との出会いは、ちょっとした縁だったと振り返る。
 「鳥取砂丘へ遊びに行ったあと、八頭町のミニSL博物館へ寄ろうと思ったら休館日で、若桜駅にSLが展示されていることを思い出して訪れたんです。そのとき駅前の移住定住・交流センターが目に留まり、相談したところから話が進みました」
 紹介された空き家バンク物件は、かつて小さな家具店が営まれた店舗併設住宅。19年4月の移住後すぐには創業せず、地元の介護施設に就職した。
 「地域の習慣などを知らないままでは難しいですから。2年ほど勤めながら、利用者さんにも方言1つからいろいろと教えていただきました」

 

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1階のデイサービスルーム。カフェのような雰囲気にして、あえてバリアフリーにはしていない。

 

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2階には団らんスペースを設置。ここで利用者と一緒に食事をつくったりする。

 

 

田舎の小さな施設だから「一緒に」取り組める

 事業の立ち上げにあたり、役場の担当者が相談にのってくれたことに加え、町長が直接言葉をかけてくれるなど、まちを挙げての応援が心強かった。こうして完成した施設は、あえて手すりの設置を最低限にとどめ、段差も解消していない。
 「町内にバリアフリーの家はほぼないので、自宅での日常生活に困らないようにすることが目的です。理念は利用者さんと『一緒に』。例えば一緒にご飯をつくったり、散歩をしたり、自立支援を大事にしています」
 今後は利用者拡大などの課題はあるが、焦りはない。「少しずつ認知していただこうと思い、営業を兼ねて各集落を歩いて回っています。声をかけると皆さんがたくさんのお話をしてくださり、畑で収穫した野菜を分けてくださることも」 
 生活面では、通勤に2時間ほどを要した以前と比べ、家族との団らんの時間が増えた。子どもは町内の小中一貫校へ通って多くの学年の子どもたちと交流している。少人数の学校だから部活などでの活躍の場が多い。
 そんな穏やかな日常も、このまちで暮らす喜びだ。

 

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JRに乗り入れ、鳥取駅へ直結している若桜鉄道の若桜駅。昭和初期の趣を残す木造駅舎で国の登録有形文化財。

 

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手動式転車台などが残る若桜駅構内ではSLを展示。鉄道好きでここを見に訪れたことが若桜町への移住の契機となった。

 

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愛犬モコの散歩でよく訪れる若桜神社は、四季の彩りに包まれる古社。「若桜町は歩くのが楽しい町です」。

 

 

若桜町のここが好き

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宿場町として栄えた往時を偲ばせる「蔵通り」。かつての商家の土蔵が連なる約300mの小道は風情あふれる散策スポット。

 

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若桜町の移住支援

第1子0歳から給食費を含む保育料完全無料、子育て応援給付金、学校給食費の半額補助、学校教材費補助、英語検定費用の全額助成、中学生以下の町内スキー場リフト券無料など、子育て支援が充実。また、住宅の新築・購入・改修に対する最大200万円の補助、新婚・子育て世代を対象とした20万円の移住奨励金に加えて、町内企業への就職時の奨励金や、最大150万円の新規創業支援と、幅広い支援を用意している。

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   若桜町の移住定住を担当する皆さん。


お問い合わせ:若桜町移住定住・交流センター ☎0858-71-0800
お問い合わせ:若桜町ふるさと創生課 ☎0858-82-2231
 

宝島社発行「田舎暮らしの本」2021年1月号掲載