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移住者インタビュー

歴史文化が好きな父の家を引き継ぎ、交流の場にしたい

古民家をゲストハウスに。横浜と智頭の二拠点生活

コロナ禍で関心が高まる「二拠点生活」。江戸時代には参勤交代の宿場町として栄えた智頭町で1軒貸しのゲストハウスを運営する村尾朋子さんは、その実践者だ。神奈川県横浜市で姉とウェブ制作会社をマネジメントしながら2018年に智頭町に移住。祖父母と父が住んでいた築150年の古民家をリフォームし、20年春からゲストハウスをスタートした。

じつは村尾さん、小学生まで鳥取市に在住していたが、智頭町は〝初めて〞の地。古民家を引き継いだのは父の思いを叶えるためだったという。「父は町史を編さんするなど、とても歴史文化が好きな人でした。この家を、智頭のまちを語り合ったり、伝えたりする交流の場にしていきたいと、引き継ぐことを決めました」。

ゲストハウスでは、野菜の収穫や田植えなどの農業のほか、薪でご飯を炊くなどの田舎暮らし体験ができ、Wi―Fi環境も完備。「リモートワークの場として1カ月滞在された県外の方もいらっしゃいました」と、ウィズコロナの時代にもフィットし順調な滑り出しのようだ。

もう1つの本業であるウェブ制作は、会社のある横浜をメインにしつつ智頭でも地元建築会社のサイトを手がけるなど、新天地での仕事も増やしている。テレワークに適した業種のため、春から秋は智頭、冬は横浜で暮らすというライフスタイル。「横浜に戻ると周りの人から〝緑の香りがする〞と言われます。しばらく横浜にいると、自分でもそれを感じます。智頭は自然が豊かな場所という証ですね」。村尾さんにとって、都会は田舎暮らしのよさを実感する場所でもあるようだ。

 

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間取りは当時の状態を継承。大部屋は12畳、目をひく立派な梁と大きな和紙の手づくりの照明、喧騒から離れて過ごすには最適な空間だ。

 

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床の間には代々受け継がれているという日本刀(鞘のみ)。古民家の歴史と和の佇まいが随所に感じられる。
明日の家 https://ashitano-chizu.com/

 

 

智頭だからできる〝新しいこと〟

村尾さんは、智頭町移住後に知り合った女性経営者とまちづくりのグループを立ち上げるなど、まちの活性化にも積極的だ。智頭町は早くから住民主体による地域活性化に取り組む先進地。だからこそ村尾さんが智頭町に来て感じたのは「新規事業の創りやすさ」だ。「補助金や町のサポートも手厚いので実現が早いと思います。ただ人口が少ない分、1人の役割が多くなるのでコミュニケーションはとても重要。いちばんの頼りはご近所さん」と話す。

男性の存在も大きいという。「電気器具や雨漏りの修繕など、町内には何でも自分でやってしまう男性が多くいます。いろんな面で助けてくれる男性は田舎ほど多い。智頭にいると男性を尊敬できますね(笑)」。

ゲストハウスの名は「明日(あした)の家」。その意味は「『明日のほうがもっと新しいことがある』という希望からつけました」と、村尾さんは常にポジティブ。智頭町に新しいことをしたい人たちが続々と集まってきそうだ。

 

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ゲストハウスの前は無農薬栽培の田んぼ。村尾朋子さん(右)と、鳥取市に住む義理の弟・岡村友彰さん。岡村さんは農作業からゲストハウスのことまで何でも頼める“相棒”だ。

 

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「智頭町は歴史文化も豊か。地元の方と県外の方がそうしたことを語り合える場所にしていきたい」とゲストハウスを運営する村尾さん。2020年の夏につくった智頭町産のスギを使った巨大な縁側は、寝そべると気持ちいい。宿泊者が利用するほか、ときには村尾さんも一緒に食事や夕涼みをすることも。

 

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村尾さんがよく利用するダイニングカフェ「楽之(たのし)」。オーナーの竹内麻紀さんは、「村尾さんを智頭の観光大使に」と語る。

 

 

●information● 鳥取県智頭町
智頭町は93%が森林に覆われており、非常に自然豊かなところ。「森林セラピー®」や「森のようちえん」など、豊かな自然を活用したまちづくりに取り組んでいる。また、災害にあった人が、智頭町へ疎開した場合に1日3 食付き計7日分の宿泊場所を提供する「智頭町疎開保険」があり、特典として年に1回、智頭町の特産品も発送し、災害を切り口とした地域間交流、物流による地域おこしを行う。
智頭町企画課 ☎0858-75-4112

宝島社発行「田舎暮らしの本2020年12月号」掲載