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移住者インタビュー

温かな地域の人たちと、地質を活かした農業にひかれて

夢は「秋山」の名前がついた大栄スイカの出荷

 日本海に面して北条砂丘が広がり、産直市場に大きなスイカが並ぶ。そんな北栄町で地域おこし協力隊として働く、秋山竜一(りゅういち)さん(41歳)と祐子(ゆうこ)さん(35歳)。竜一さんは鳥取市出身、祐子さんは北海道出身で、以前は東京都調布市で暮らし、2人とも介護の仕事に従事していた。
 「僕が40歳を機に鳥取に戻りたいと考えたんです」(竜一さん)
 鳥取県の東京相談窓口でUターンの相談をしたところ、農業をすすめられた。「北栄町は農業が盛んで、特に火山灰土壌『(くろ)ぼく』の土による農業があると聞き、その土で作物を育てたいと思いました」(祐子さん)
 そこで北栄町の地域おこし協力隊に応募。竜一さんはイチゴ栽培の、祐子さんは妻波(つまなみ)地区の地域おこし協力隊として、2017年7月に着任した。
 現在、竜一さんは「北栄ドリーム農場」でイチゴ栽培に従事。
「夏場のハウス作業は40度にもなるので、暑さと湿気に慣れなくて大変です」と苦労を話す。
祐子さんは、妻波地区の農地を守る活動や農産物の魅力発信、地域行事に関する活動などが主な仕事。さらに、交流のある地元農家、河辺恭教(かわべやすのり)さんのスイカ畑で農業を学んでいる。
「農作業は新鮮で面白いですが、スイカは手入れや交配、収穫期の見極めなど、経験が必要とされることが多く難しいですね」師匠である河辺さんは、「祐子さんは質問も多く、とても一生懸命で熱心です。若い就農者が来てくれるのは、とてもうれしいですね。ここ北栄町には大栄(だいえい)スイカというブランドがあり、販売ルートができているのが利点です」と話す。
糖度11度以上と甘くシャリ感のある大栄スイカ。出荷の際には生産者の名前のシールが貼られる。祐子さんは、「いつか、『秋山』の名前を貼ったスイカを出荷するのが夢です」と目を輝かせる。

 

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北栄町は全国屈指のスイカの産地。「大栄スイカは、甘くてシャリ感があり、みずみずしいです」と祐子さん。

 

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秋山さん夫妻が暮らすのは、妻波地区にある広い一軒家だ。

 

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妻波地区にある「おためし住宅」は、中をきれいにリフォーム済み。ここの管理も祐子さんの仕事の1つ。

 

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昨年暮れの岩崎神社の注連縄づくりには、妻波地区の人たちと一緒に秋山さん夫妻も参加した。

 

 

豊かな風土で、野菜も果物も魚もおいしい

 祐子さんは、子ども会と老人会が一緒に行える行事を考えたり、「こけない体操」などの地域のイベントへの参加や地域活動の支援をしている。
 「地域の人たちがみなさん『支えてあげないと』という気持ちで私たちを歓迎してくれています。野菜も果物も魚もおいしくて、周囲の人たちにも恵まれて幸せです」(祐子さん)
 「思っていたより便利でした。気軽に飲みに行くことはできませんが、地域の飲み会も多く楽しいです」(竜一さん)
 任期終了後は、2人して独立就農を目指すという。そのため、今秋から祐子さんは、鳥取県立農業大学校の実務研修を受ける。また北栄町には、新規就農へのさまざまな支援もある。大玉の大栄スイカのように、秋山さん夫妻の新規就農への夢は豊かに実りそうだ。

 

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毎日、師匠である河辺さんのスイカ畑で、秋山さん夫妻。「田舎で困ったことは虫が多いこと。でも、だいぶ慣れました(笑)」と祐子さん。

 

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祐子さんにていねいに教える河辺さん。トンネル栽培では、覆いを開閉して温度を調整する。

 

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秋山さん夫妻と、河辺恭教さん(右奥)、恭教さんのお母さんの小夜子さん。農業だけでなく、さまざまな面でサポートしてもらえる強い味方だ。

 

 

●information● 鳥取県北栄町
北栄砂丘と風力発電の風車。この風力発電所は市町村直営では日本最大級。
鳥取県中部にある人口約1万5000人の町。農業が盛んで、特に大栄スイカが有名。海、山、砂丘などを有するほか、青山剛昌先生の出身地であり『名探偵コナン』をテーマにしたまちづくりも行われている。
<問合せ先>北栄町観光交流課 TEL 0858-37-3158

宝島社発行「田舎暮らしの本2018年9月号」掲載