ドライフラワーカフェ「H.ALNOYUZ」を営む加藤浩美さん
自分がしたいことをして地域を盛り上げる
国道181号沿い、日野川が流れ、川向こうには雄大な大山の姿が見える場所に、ドライフラワーカフェ「H.ALNOYUZ」はある。大阪から移住した加藤浩美さん(39歳)が、2024年1月にオープンさせた。
茨城県出身の浩美さんは、転勤族だった両親とともに富山、島根、愛知など転々とした。静岡在住時に出会った義和さん(40歳)と結婚し、大阪で10年以上暮らしていたが、義和さんが実家へ戻ることになり、家族揃って21年7月に江府町へ移り住んだ。住まいは義和さんの実家だ。
「実は、あまり来たくありませんでした(笑)。でも、来てみたらここが宝の山に見えてきたんです」
そう話すのも浩美さんがドライフラワーアーティストだから。
大阪でドライフラワーをつくって販売していた浩美さんからすると、自然が豊かな江府町は、まさに宝の山。移住後もドライフラワーの制作をしたくて、NPO法人「こうふのたより」に相談したところ、工房として空き家を借りることができた。ドライフラワーのアレンジメントだけでなく、江府町の夜空を模したキャンドルや奥大山の玄米を焙煎したノンカフェイン玄米珈琲なども販売。
「次に、地元の人が集まってランチやお茶をしながら笑顔あふれるお店が欲しいと。若い人たちにも『奥大山・江府町っておしゃれだよね!』と言ってもらえるようなお店にしたいと思い、素敵なカフェづくりを目指しました」
以前、喫茶店とデイサービスだった店舗を購入。
ドライフラワーカフェ「H.ALNOYUZ」
住所:鳥取県日野郡江府町武庫1198-1
営業時間:11:00~15:30
(ランチはなくなり次第終了)
https://www.instagram.com/h.alnoyuz/
店舗は国道沿いの物件を知人から購入でき、資金もクラウドファンディングで約100万円を集めることができた。物件は喫茶店やデイサービスとして使われていたため、厨房もバリアフリーのトイレもあった。補修は、壁紙や電気工事、看板、ディスプレイなどのみですんだ。
人気の「とろとろチーズとたまごのオムライス」(1280円)は、サラダ、スープ付き。チーズだけでなく、たまごもトロトロのオムライス。別添えのデミグラスソースをかけていただく(価格は取材当時のものです)。
ゆったりとした店内には、たくさんのドライフラワーが飾られている。
ドライフラワーのアレンジメントのほか、バスソルトやキャンドルなども販売。
2022年6月には浩美さんの実母も江府町に移住し、お店を手伝っている。
「いいところですよね。私も移住してよかったです」。
スイーツやドリンクもある。写真は、飲んでスイーツの「紫スイートポテト」(630円)
開業後は地域の方もよく来てくれている。特に、鳥取県の情報発信を行っている会社「スタジオビーチ」の小林大二さんは、会社が近くということもあり常連だ。小林さんは、江府町公認の鳥取県ご当地VTuber「おたねちゃん」の運営を行っていて、「おたねちゃん」のグッズはH.ALNOYUZでも販売。「町を訪れた『おたねちゃん』ファンには、H.ALNOYUZさんをご紹介しています。」
小林さん(写真右)も愛媛県からの移住者。
「ランチは日替わりだし、新しいメニューも増えるし。来るたびに進化していてわくわくします」と楽しそうだ。
「おたねちゃん」も缶バッジを買いに来るお客さんもいる。
期間限定で、「おたねちゃん」のコラボドリンクも 提供した。
自宅前で、加藤さん家族。左から、義和さん、裕貴(ひろき)くん(4歳)、浩美さん、遥輝(はるき)くん(9歳)、優月(ゆづき)くん(12歳)。
現在、3人の男の子を育てている加藤さん夫妻。
「子どもたちは、最初は慣れない様子でしたが、いまでは江府町のほうがいいと言っています。通学のバス代補助、給食費無償、18歳までの医療費無料のほか、制服やタブレットも支給され、学童保育の利用も無料。こうした子育て支援は助かりますね」。
まわりの方に支えられて、人とのかかわりが広がっていると浩美さん。
「江府町は、人も物産も宝がいっぱい。今後は、町の人たちとさまざまなコラボやイベントをしていきたいです。町が盛り上がって、少しでも恩返しができればうれしいです」と笑う。
江府町の魅力的なスポットがまた1つ増えた。
浩美さんは大の爬虫類好き。
写真はお気に入りの1匹「フトアゴヒゲトカゲ」。
江府町(こうふちょう)
鳥取県の西部に位置し、中国地方最高峰の大山の麓にある人口約2500人のまち。奥大山の美しい自然に囲まれ、木谷沢渓流は、サントリーのCMに起用された。広大なブナの森から湧き出す美しい水に恵まれ、県内屈指の米どころとして知られる。羽田空港から米子鬼太郎空港まで約1時間20分、空港から江府町まで車で約1時間。大阪からは車や高速バスで約3時間。
宝島社発行「田舎暮らしの本」2024年8月号掲載