<正田好実さんのプロフィール>
20代(※取材当時)埼玉県出身
東京と鳥取を一か月ごとに行き来しながら生活している
元鳥取県琴浦町地域おこし協力隊
現在『鳥の巣』代表
*
Q.鳥取県に移住された理由、きっかけを教えてください
インタビューにて大学時代を振り返る正田好実さん
A.地域おこし協力隊になりたくってというところが最初で。
もっと詳しく話すと、私は大学4年生の時に本当はデンマークに留学をしたかった。でも、ちょうどその年にコロナが流行しだして、行けなくなった。それまで留学に行く気満々だったから全然就活していなくて。4年の6月から就活始めるみたいな感じになって。
そこから、自己分析や業界分析なんかを考え出すようになった。一応、その後の就活で内定をいただいたところはあったんだけど、自分の中で迷いがあった。私の人生このまま就職しちゃっていいのかな?って。
だから、内定をいただいたところも辞退して、進路がずっと決まらないまま4年の12月になった。その時にずっと鬱々しているのが嫌になって、四国一周をいきなり始めたんですよ。その経験が私に凄く衝撃を与えたっていうか。いつも住んでいる場所とは体験できることが違って、四国一周の時にそれを初めて体感した。
私はずっと埼玉県に住んでいて、見渡す限り住宅街の場所で育ってきた。マンションの隣の人とは挨拶はするけど、何をしている人かは知らない。それが当たり前の場所だった。初対面の人といきなり一緒に食事を共にして、次の日遊びに行くみたいな経験を初めてして、なんだこれは!(笑)って思った。
私はずっと海外に行きたいと思っていたけど、そもそも日本のこと何も知らないのでは?
と気付いた。もっと日本の地域について知りたいと思った時に、地域おこし協力隊というものがあることを知って、この職に就きたいと思った。
地域おこし協力隊の募集が載っているサイトがあるから、北海道から沖縄までのリストを全部見ていった。自分の中で、希望地域の条件を決めて選んだ。海側の地域や先輩協力隊がいるところがいいなとか。地域の中の人と外の人を繋げられそうな仕事がいいなとか。
いろいろ絞っていった中で、最終的に現地に2か所面接に行った。その時に感じた地域の雰囲気で鳥取県琴浦町がいいなと思って、選びました。自分に何かゆかりのある地域とかではなくて、たまたま選んだ地域が琴浦だったということで来させていただきました。
Q.普段どんな生活を送っていますか?
A.2024年の4月に鳥取県の協力隊を卒業して、そのあとは東京と鳥取を1か月ごとに拠点生活みたいなことをしています。
私にとってそれは心地よいサイクルになっていて。いろんなものを見たい知りたいという欲求が強いから。
東京は自分からつながりを求めなければ、限られた人の中で生活ができる場所。鳥取は普通に生活していたら、当たり前のように顔見知りになって人とのつながりができる場所。
そんな生活の特徴を自分の中で使い分けながら、楽しく生きてる。1か月間鳥取満喫してから、じゃあ次東京楽しむぞみたいな感じですね。今は都市と地方の良い所取りをした生活を送ってるんですよ。(笑)最高なんです。
『鳥の巣』代表として東京と鳥取を行き来する生活を語る様子
Q.どんなお仕事をされていますか?
A. 『鳥の巣』では、鳥取県の地域おこし協力隊のネットワークを作ってる。
日本全国で協力隊は5000~6000人いるのよ。だから、人数が少なかった頃は国が全県フォローしますって感じだった。けど、そろそろいい加減無理だから、各県に頑張ってねっていう状況になってる。
ある所には、それぞれの県で協力隊ネットワークがあるんだけど、鳥取県には無かった。だから『鳥の巣』は、鳥取県の協力隊のためのネットワークを形成するための組織として初めて作ったものになってます。今はまだ『鳥の巣』は任意団体で、来年再来年あたりで県との状況も見ながら法人化出来たらな、みたいなことは思ったりしています。
『鳥の巣』のメンバーは4人いて、20代から50代手前の方がいる。年齢は関係なく、25歳(※取材当時)の最年少の自分が代表をさせてもらっているんですけど、私よりも人生経験が豊富な方々と一緒に活動させてもらっています。
メンバー全員が違う町の協力隊だから、意見交流や悩みを相談し合ったりしている。協力隊としての仕事は、受け持っている自分たちの町で行ってる。ここでは、自分たちの町では話しにくいことも相談し合える。地方の地域は小さいから、いい意味でも悪い意味でもつながりを持ちやすい。
だから、情報も筒抜けになりやすい。例えば、町と協力隊の希望する活動の認識にミスマッチがおこること。町と協力隊の認識のすり合わせは、事前にできないことも多いから、町は町内の人向け地域活性化の活動を期待していたけど、協力隊は町外の人向けの活動を行っちゃったり。そういうすれ違いがあることを仲間と共有します。
他の地域の協力隊の方々だから話しやすいということもあります。『鳥の巣』が協力隊の皆さんにとって少しでも一息つける場所になって、また各町に羽ばたいていけたらなという意味で『鳥の巣』という名前を付けたりしました。
それぞれの町にいる鳥取県の地域おこし協力隊が悩みを相談し合うことで、
自分の町にいるだけでは見えてこない気づきがあると語る様子
Q.お仕事にかける思いを教えてください
A.私が地域おこし協力隊になったその年の初めの2週間はコロナで自宅待機だった。
だから、ずっと孤独を感じてた。そんな時、鳥取県で自力で動いている協力隊の人であったりとか、よその町の協力隊の人がいるらしいということを聞いて、何とか人脈を作っていったというところがある。
自分の町にいるだけでは狭くなっていた視野がよその町の方と関わる中で広がったし、もっと色々出来ることがある!という風に思えたことがもの凄く大きかった。今後、『鳥の巣』はこれからの地域おこしを担っていく後輩協力隊の人たちに、自分達の町だけのつながりだけでなく、よその町とつながりを持つことによって、活動の幅を広げられる機会作りや自分の心理的安全性を保てる場所になれるよう動いていけたらなと思っています。
話せるだけでもすごく大きい。自分が孤独だった時つながりを持てて安心できたという経験からも、一人で孤独に頑張っている協力隊の皆さんの心の中のものを吐き出せる場を提供したいという思いが強いです。
……かっこいいことをこれまで沢山言ってきましたが、あとはみんなで単純に友達作ろうぜという思いです。(笑)
地域のために頑張って動いている協力隊員たちが
孤独にならず、悩みを吐き出す場所は重要だと語る正田好実さん
Q.鳥取の好きなところ、いいところを教えてください
A.私はずっと埼玉県で生まれ育ってきたので、海が日常にあるって素晴らしいなって。
今は引っ越してしまったんですが、前の家は徒歩20秒で海だったんです。ちょっと夕方に海辺を散歩していると海と夕日、空の色がグラデーションしていて凄く綺麗なんですよ。
これが見えるのも本当幸せだなって思うし。あとご飯がすごくおいしい。スイカがこんなに甘いことを初めて知ったのも鳥取に来てからです。でも、やっぱり1番は住んでいる人の面白さですね。ここに住んでいる人は生きてるなって思う。
都市に住んでいると、「高校卒業後は良い大学入って、いい会社に就職」みたいなことが当たり前だけど、地方に来ればいろんな生き方をしている人に出会えるから、自分のこれからの生き方を考える視野が広がる。
東京とか埼玉には仕事するために暮らしている人が多かったけど、鳥取とかの地方には暮らすために仕事している人が多いなって感じてる。あとは、人生いろんな事してもいいんだなって、そんな風に思えたのはこの鳥取に来てから。鳥取ではそんな風に思わせてくれる素敵な人たちに出会えた。
だからこそ『鳥の巣』のメンバーには、彼らがいつか鳥取を離れる選択をしたとしても、『鳥の巣』で鳥取のみんなと出会えて良かったなという気持ちを持って飛び立ってもらいたい。『鳥の巣』での活動にかける思いは私が感じた鳥取の素敵なところにもつながっています。
熱いパッションを受けながら、鳥取愛を語る姿にインタビュアーたちも
感銘を受けていました!
…✩…✩…✩…✩…✩…✩…✩…✩…✩……✩…✩…✩…✩…✩…✩…✩…✩…✩…
<正田さんに教えてもらった、おすすめのとっとりのやわらかいインフラを体感してみた!>
美味しいコーヒー(カフェ)
●jifukel
鳥取県琴浦町にあるjifukelは、鳴り石の浜のすぐそばにあるカフェ。店内の大きな窓から日本海が一望できます。ここのレモンスカッシュにはゆずのシャーベットが乗っていて、炭酸との相性が抜群に良くて、美味しすぎる。
使い勝手の良いコワーキングスペース
●ホテルレッシュ鳥取駅前 コワーキングスペース えきまえwifiテラス
鳥取市栄町にあるホテルレッシュ鳥取駅前のコワーキングスペース。2時間550円で利用でき、Wi-Fiも完備。コーヒーやココアなどのドリンクも飲み放題。カウンター席や4人掛けの机、6人掛けの机等いろいろあるので、自分の気に入った場所で作業ができる。店内は落ち着いた色やデザインのインテリアで統一されていて、集中して作業ができる空間。
<正田さんイチオシ!おすすめのとっとりの豊かなインフラを体験してみた!>
●豊かな自然 〜鳴り石の浜〜
●豊かな自然 〜菊港〜
鳥取県琴浦町赤碕にある菊港。波が大きく迫力のある海。風も気持ちよく、ほのかに潮の香りも感じることができ、暑ささえなければいつまでもいられそうな、そんな気持ちの良い港。また、「波しぐれ三度笠」という三体の石の彫刻があり元気や勇気を与えてくれる
…✩…✩…✩…✩…✩…✩…✩…✩…✩……✩…✩…✩…✩…✩…✩…✩…✩…✩…
★取材した感想★
初めての1人旅先がなんと今回の鳥取!全てに目を輝かせながらイキイキと鳥取を楽しみつくしていました♪
今回取材させていただいた正田好実さんは、主に『鳥の巣』の代表としての仕事をしていて、町や協力隊の方々とLINEやSNS、メールを使ってつながりを形成している。過去には地域のお年寄りの方向けスマホ教室を開催したり、琴浦町の地域協力隊としてコロナ禍でも琴浦の良さが伝えられるようなオンラインツアーの企画や実施をしたりしていた。
著名な観光地の紹介ツアーではなく、琴浦に実際に住み、生活している個性豊かな人たちを巡っていくというような新しい観光を実践している。好実さんが企画した、人を巡るツアーは、その地域にどんな観光地があるのか、建物があるのかではなく、そこにどんな人がいるのかに焦点を当てた新しい観光の形。地域と地域よりも、人と人を繋ぐことに熱意をもって活動している好実さんらしい素敵な企画だと率直に感じた。
もし、私が社会人になったら…
「こんな風に鳥取で暮らしてみるのもアリかも」
今回の取材で一番に感じたこと、それは鳥取で暮らすことは思っていたよりも特別なことじゃないということ。
車さえあれば、品揃いの良い巨大なスーパーがあるから一気に買いたいものが揃えられるし、汽車に30分ほど乗れば、一息つけるお洒落なカフェもパン屋も子供が遊べるレジャー施設だってある。保育園だって、病院だってある。自然が多い分、海とか山とか川が至る所にあるから伸び伸びと羽を伸ばせるし、綺麗な空気と景色は体を自然と癒してくれる。
海が近いから魚も美味しいし、水が綺麗だから米も旨い。楽しく生活するには十分すぎるくらいのものが詰まっている鳥取県は本当に居心地が良い。
そんな鳥取県に私が住むなら、鳥取駅から汽車で30分くらいのところに家を買って、鳥取県で作られた米や野菜、魚や肉を使って美味しいご飯を作りたい。家族がいるなら、みんなでそろって食卓を囲んで、なんてことない1日の出来事を話しながら笑い合いたい。
週末は、鳥取駅で友達と一緒に美味しいパンケーキが食べられるカフェやパスタやピザが食べられる飲食店に行きたい。人といるに疲れた時には、琴浦町まで車を走らせて日本海の見える落ち着いた喫茶店でコーヒーを飲みながら一人時間を堪能したい。
美味しいものを食べて、人と関わって、一人の時間も大切にできるような暮らしを鳥取で出来たなら本当に素敵だなと感じた。