移住者インタビュー

ワークライフバランスの充実

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  「結婚を機に、これまでのエンジニアの仕事を辞めて公務員になり、家族との時間や、ワークライフバランスの充実を目指しました」。そう話すのは相田健吾さん(取材時30歳代)。鳥取県米子市の出身のパートナーとの結婚を機に、東京から米子市に移住を決めた。現在は米子市役所に勤務しており、主に環境行政に携わっている。

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相田健吾さん

(岡村こず恵撮影,2023年9月21日)

 

フルマラソンを全速力で、このまま走り続けるのか?

 鳥取県の西部に位置する米子市は鳥取県の主要都市のひとつであり、2022年度の移住者数は361人と鳥取市に次いで二番目に多い(1)。そんな米子市は、移住者に対する受け入れの制度が充実しており、とても助かったという。移住を決めた一番の理由は、ワークライフバランスを改善すること。前職のエンジニアの仕事は充実しており、やりがいも感じていた。しかし休みが少なく、通勤時間も長く、家族との時間は取りにくい状態であった。ある日、旅先にまで仕事の電話がかかってくる日常に疑問をもった。42.195kmのフルマラソンのはじめの100mを全速力で走っているような感覚があった。「このままでよいのか」。これからの人生を考え直し、パートナーの実家のある米子市の移住を考えるようになった。

 

米子市での生活の良かったこと、残念なこと

 米子市に移住して、ワークライフバランスの改善については大正解だった。通勤時間も短く、帰りも早くなったため家族との時間が取れ、家族も仕事も両方大切にできるようになった。そして、想像以上に良かったことは、仕事のやりがいだった。民間企業から行政という全く組織文化が異なる環境で働くことに不安もあったが、米子市役所での仕事に想像以上のやりがいを感じている。「地方都市での仕事は、まちの将来や自分たちの生活に影響を与えることができるとても面白い仕事」と、手ごたえを感じている。今後のキャリア形成の目標も「部長に昇進すること」と明快だ。また、ゆっくりと時間が流れる環境で子どもを育てられることにも満足している。水が美味しいことも魅力の一つだ。ただ、東京では保護者や同年代の友人などと楽しめるイベントが多かったが、米子市ではそういった時間が減ったという。友人と遊ぶ機会が減ったのは少しさみしい気もするが、おかげで家族との時間が増え、お金を使う場面も減ったので、その点で考えればメリットとも言えるそうだ。

 残念に思っていることは、収入が減ったこと、学校が少ないことから子どもの将来の教育について不安があることである。公園に行っても子どもが少なかったり商業施設が少ないなど、新しい出会いの機会が少ないことも少し残念に思っている。「良かったこと、残念なこと、総じると、今のところ評価は「◎(二重マル)」。移住の選択は間違っていなかったと思っている」と力強く語られた。

 

米子市での暮らしぶり

 これまで生活のほとんどを仕事に当ててきた相田さんは、移住してどのような暮らしを送っているのだろうか。東京在住の時は、休日はほとんど外で遊んでいたが、米子市に来てからは、祭りに参加をしたり、地域の手伝いをすることも多いそうだ。神輿(みこし)係として家族で祭りに参加し、地域住民とのつながりを広げることができるなど、東京ではあまり味わえなかった楽しさがあるという。体力づくりのためにトレーニングも欠かせない。田舎暮らしを考えている人には、「どんなことでも積極的に体験し、やりたいことを見つけて実行することが大切」とのことだ。

 

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相田さんからお話を伺う

(岡村こず恵撮影,2023年9月21日)

心技体を磨く

 これから就職活動というキャリア形成の節目を迎える私たち大学生にアドバイスをお願いしたところ、相田さんは「お金をもらって成果を出すのがビジネスパーソン、お金を払って勉強するのが学生」と勤労者と学生の違いを端的に表現され、「心技体」を磨く重要性を指摘された。心技体とは、精神やスキル、勇気や強靭な肉体を有することである。これらを鍛えるためには、比較的時間を自由に使える学生時代に知識や技術を磨くことはもちろん、体力づくりや筋トレなどの習慣をつけておけば、働いてからも継続しやすい。そして、所属するコミュニティを増やすことで心の安定につながるため、複数の手段をもっておくことが大切だ。相田さん自身も、仕事を通じて知識や技術を修得し、体操で体を鍛え、地域の祭りなどに参加することで、心豊かに過ごすことができているという。さらに、コミュニティに属するときのコツは「質問をすること」。「質問するという行為は、相手や対象に関心をもっていますというメッセージになる」と、コミュニケーションの重要性を話された。

* * *

 相田さんは、家族との時間を大切にするために大きくライフスタイルを変更し、最初は東京との違いに戸惑いながらも、祭りといった地域での活動にも積極的に参加し、地域に馴染む努力をされている。変化を恐れない生き方に感銘を受けた。後悔せずに、有言実行する生き方を学び、これからの人生のひとつのモデルにしていきたいと考えている。

 

<相田健吾(あいだ・けんご)さんプロフィール>

 ワークライフバランスの改善を目的に、パートナーとの結婚を機に、ご家族ともに2021年に東京都から鳥取県米子市に移住した。エンジニアから地方自治体職員へとキャリアチェンジをした。趣味は体操。休日は家族と過ごしたり、トレーニングに取り組む。

 

参考文献

(1)鳥取県ウェブサイト「令和4年度鳥取県への移住者数について」

(2023年10月7日参照)

(2023年9月取材)

米子市役所_相田健吾氏/ふるさと鳥取県定住機構_中元淳子氏、箕浦香生里氏_tori_mini.jpg

すぐに生かせるような具体的なエピソードをたくさん伺った

(ふるさと鳥取県定住機構撮影,2023年9月21日)