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移住者インタビュー

大山の最高のロケーションでBMXの聖地を

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 冨永勇太さん(取材時30歳代)は岡山県から鳥取県の江府町(こうふちょう)に2016年4月に家族で移住し、3年後には自転車競技であるBMX(Bicycle Motocross)のスケートパーク(競技用専用公園)である「BIG MOUNTAIN ROOMS.」を自ら建設した。BMXというのは半世紀前にアメリカのテキサス州で生まれ、レースやフリースタイルなどで速さや技を競い合う。2020年東京オリンピックからフリースタイルのパークが正式種目となったので、記憶している人も多いだろう。冨永さんは17歳でプロデビューしたトップクラスのBMXライダーである。

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冨永勇太さん

(岡村こず恵撮影,2023年9月20日)

 

移住の決め手は「水の美味しさ」と「ちょうど良い標高」

 冨永さんが岡山県から鳥取県江府町に移住した理由は二つある。一つは水の美味しさ。東日本大震災による原発事故以来、水の重要性を以前より強く意識するようになった。豊かな環境で子どもを育てたいということもあった。もう一つは標高の高さが丁度良いということ。江府町は400m位の標高で都心部より気温が2、3度低く過ごしやすい場所だった。

 2018年には、移住定住相談事業に取り組む「特定非営利活動法人こうふのたより」のみなさんの応援も得て、廃校になった小学校跡地を見つけることができた。特に旧・体育館は雄大な大山の眺望がある最高のロケーションであり、「ここしかない」と即決したという。ジャンプ台を含むBMXのコースは木製で、なんと全て冨永さんや地元のみなさんの手作り。一緒にコースを造りながら遊ぶDIYイベントも開催した。「もともと自分たちで何かをつくることが好きで、江府町のコースも自分たちで作り上げました」。確かに私たちが訪問した時も、校庭の跡地で屋外のコースを整備するために冨永さん自らショベルカーを操っていた。かなりの腕前だ。

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「BIG MOUNTAIN ROOMS.」で華麗なジャンプを披露する冨永さん

(岡村こず恵撮影,2023年9月20日)

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元・職員室や理科室などは、受付カウンターや応接室にリフォーム

(岡村こず恵撮影,2023年9月20日)
 

 見知らぬ土地で不安やためらいはなかったのだろうか。冨永さんは、移住を決めるには「勢いも大切」だと言う。「成功できる確証はなかったものの、やってみないと分からない。自分には成功させることが出来るという確信があったため、ためらいはなかった」と語る。今では全国からBMX愛好家がこのパークを目指して鳥取に訪れるようになった。

 

 

日本のBMXプレイヤーを増やし、世界の人々と交流するパークを作っていたい

 世界的に注目を集めるBMXだが、富永さんによると、日本での競技人口は500人程度で、なかでも熱心に取り組んでいるのはその一割程度だという。これは日本で人気のある野球やサッカー人口よりかなり少ない。そこで、BMXを盛り上げるために、まずは日本のプレイヤー人口を増やすことを考えている。「BMXはスポーツとして捉えられているが、もともとは1970年代のアメリカで、モトクロスレースを真似て子どもたちが遊んでいたことが起源。だから教えるのではなく、遊びのなかで自由に成長していける環境をつくりたい」。いまは江府町だけでなく、鳥取県八頭町姫路地区にある「安徳の里 姫路公園」のキャンプ場にも、BMXコースをつくるリニューアル計画も進行中とのこと。BMXの聖地が広がっていくようだ。

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BMXパークにて車座で話しを伺った

(岡村こず恵撮影,2023年9月20日)

 

 冨永さんは、40歳代くらいまで現役でBMXを続けたいと考えている。そして、今後は日本だけでなく、世界の人々と交流するパークを作っていきたいという。「アメリカテキサス州に有名なBMXの練習場があります。あのようなパークを日本にも作りたい」。その夢の実現にむけて、英会話を勉強中とのこと。どこまでも生き方がアグレッシブだ。

* * *

 私たちは「とっとりキャリア教育学生プロジェクト」を通じて対人関係を築く力の大切さや、新しい状況に適応し変化を受け入れる柔軟性、多様な働き方があることを学んだ。自分の将来が決まっていなくても、焦らずに自分が少しでも関心があることから挑戦していくことが大切である。そうすることで、自分に合ったやりがいのある仕事を見つけることにつながるのだろう。

(取材時期:2023年9月)

 

冨永勇太(とみなが・ゆうた)さんのプロフィール

岡山県倉敷市生まれ。17歳で自転車競技であるBMXでプロデビューし、世界規模の大会「アジアンXゲームズ」に日本代表として出場した。2016年4月に、水の美味しさと、ちょうど良い標高に惹かれ、家族と共に鳥取県江府町に移住した。2020年10月、小学校の跡地を利用して、スケートパーク(競技用専用公園)である「BIG MOUNTAIN ROOMS.」を開設。

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晴天なら大窓から雄大な大山が望める

(岡村こず恵撮影,2023年9月20日)