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移住者インタビュー

地方だからこそできる挑戦 建設とテクノロジーをつなぐ起業のかたち

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 鳥取県に建設関係のベンチャー企業であるONESTRUCTION株式会社を起業した宮内芳維さん。鳥取で大学生活を過ごし、建設業界で建設の仕事をした後、建設業界をより良くするために建築とテクノロジーの架け橋になることを目指されています。現在は、大阪や東京など、国内の各地に支店を設け、海外にも視野を広げ、活躍されています。

 

建設関係のベンチャー企業を設立したきっかけ

 大学3年生の頃からさまざまな業界でインターンシップに参加し、数多くの社会人と出会ってきたという宮内さん。そこで感じたのは、「社会に出ても夢や希望を持っていない人が少なくない」という現実でした。大手企業に勤め、安定した地位を得たとしても、日々の仕事に追われ、自分の理想や挑戦を忘れてしまっている30代、40代の方々の姿を多く見てきたといいます。

 とくに建設業界では、残業時間が長く、仕事に追われて心に余裕を失う人が少なくありません。その背景には、デジタル技術やAIといった新しい知識を取り入れず、従来のやり方を美徳とする文化があると感じたそうです。「このままでは将来の世代も同じ苦しみを味わってしまう」との思いから、自ら行動を起こす決意をしたとのことでした。

 一度は土木設計会社に勤めたものの、現場の過酷さを身をもって体験したことで、「自分たちの世代で業界を変えたい」という強い思いが芽生えました。そして、残業が少なく、働く人が夢をもって成長できる未来をつくるために、建設業界をより良くするベンチャー企業の設立を決意しました。

 

鳥取県で起業した理由

 兵庫県西宮市出身の宮内さんが鳥取に拠点を置いた背景には、三つの理由があります。一つ目は、大学・大学院を鳥取大学で過ごし、地域の人々や企業に支えられたことに対する感謝の思いです。地元ではない土地で多くの人に助けられた経験から、「いつか恩返しがしたい」と感じていました。

 二つ目は、東京のような都市部ではなく地方で挑戦することに意義を感じたからです。都市のスタートアップ業界では競争が激しく埋もれてしまいやすいですが、地方では挑戦そのものが注目を集め、成長のチャンスも大きい。実際、鳥取では自治体などからの関心も高く、企業としての存在感を発揮しやすいとのことでした。

 三つ目として、現実的な理由として、コストの低さを挙げられました。起業当初は月2万円ほどの家賃でオフィスを借りることができ、限られた資金でも事業を始められました。これらの要素が重なり、「地方だからこそできる起業の形」を目指し、宮内さんは鳥取でのスタートを選ばれました。

 

鳥取で暮らして感じた都会との違い

 鳥取での暮らしについて尋ねると、宮内さんはまず、「都会と地方の違いは、人口の差だけ」と述べられました。宮内さんにとっては、「地方」、「都会」という区別そのものに意味はなく、日本の中だけで比較せず、より広い視点で「日本人として世界で何ができるか」を考えることが大切だとのことでした。そのため、暮らす場所を都会か地方かで判断するのではなく、あくまで「自分との相性」で選ぶべきだと考えられておられるようでした。

 情報面でも、今はSNSやAIなどを活用すれば、どこにいても必要な情報を得ることができる時代で、「地方だから不利」という感覚はないとおっしゃります。一方で、鳥取のような地域は「人との距離がほどよく遠い」ことをメリットとして挙げられました。都会では隣人との関係が近すぎて気を遣うこともありますが、鳥取ではプライベートを尊重した距離感で生活ができ、むしろ気楽に過ごせるとのことでした。

 また、一般的に「地方の人間関係は濃くて面倒」という先入観を持つ人も多いですが、実際に鳥取で暮らしてみると、それは必ずしも当てはまらなかったそうです。大学時代を通して感じたのは、「人間関係の濃さは場所ではなく、自分がどう関わるか次第」ということでした。都会でも地方でも、自分のスタンス次第で自由な人間関係を築ける──それが鳥取での生活を通して宮内さんが得た実感でした。

 

職務内容とこれからのビジョン

 ONESTRUCTIONは、主に建設とITの分野に携わるベンチャー企業です。宮内さんは取締役CTO(最高技術責任者)としてITと建設業界をつなげていくことで建設業界を効率化することをミッションとして掲げています。

 最近では海外での事業に力を入れていて、海外での売り上げを日本国内の売り上げと同等以上にすることを目指しています。また、宮内さんは、「誰もが想像しないものを生み出して、新しい価値を生み出すこと」を自分自身の課題としています。

 日本国内においても、大阪に関西支社を設けたことから、関西の人々をONESTRUCTIONのビジネスに巻き込むことで関西を盛り上げていきたいと考えています。

 また、ONESTRUCTIONは若い人が多い企業であることから、社員のマナー向上にも力を入れています。年上の人との交流もあることから、服装などに一層気を付けるといったマナーを重要視しているとのことでした。

 

「建設とテクノロジーの架け橋になる」ということ

 宮内さんは「建設業界に携わった経験を活かし、建設業界の人にも理解しやすいような話し方をすることを心がけている」と語ります。また、建設業界の人に対しては専門用語も使うのに対して、大学で講演をするときなど、若い人に話をするときには分かりやすい簡単な表現を使うようにされているそうです。特に若い人に建設業界の専門知識を話すときにはマッチングアプリに例えた話をするなど、世俗的な話題を取り入れることで若い人にも専門知識をわかりやすく理解してもらえるように工夫することを心がけています。

 実際に、宮内さんは過去「マッチングアプリの研究」をしていました。マッチングアプリは、自分と好みや志向などが似ている相手を探してくれるアプリです。宮内さんはマッチングアプリの概念は建設業界の専門知識の説明にも応用でき、説明に使いやすいとのことでした。マッチングアプリでは、条件を決めて相手を選び、事前に相手との相性を確認することが重要です。建設業界でも、「相手とのすり合わせ」が大事なことから、発注者と施工者が正確に専門知識に対する認識を共有できるようにするために、マッチングアプリのテクノロジーの発想を応用して、効率的で信頼性の高い関係構築をしたいと考えているとのことでした。

 宮内さんは、「相手に合わせて用語を使い分けることができる人間であることで、建設とテクノロジーの架け橋になれる」と語られました。

 

若い世代や鳥取で働きたい人へのアドバイス

 若い世代や鳥取で働きたい人へのメッセージとして、宮内さんがまず強調したのは、「本音と建前を使い分けられる大人になってほしい」ということでした。正直なことは美徳とされがちですが、社会では、本音だけで生きていくのは難しい。特に20代前半のうちは思ったことをすぐ口に出してしまい、結果的にトラブルを招くことも多い。「口は災いの元」という言葉の通り、社会人としてやりたいことを実現するためには、ある程度の「処世術」が必要で、相手や場に合わせて振る舞う力が、長く働く上で欠かせないとのことでした。

 もちろん、すべてを偽るわけではありません。大切なのは、「本音を言うべき人」と「建前で対応すべき場」を見極めることです。例えば、会議で意見をぶつけても前に進まない場合、別の人を通して動かす政治的なやり方が良い結果につながることもある。人間関係を壊さずに目的を達成する、この政治的バランス感覚こそが「社会で生きる力」とのことでした。

 また、宮内さんは「自分の夢や想いを語る場所を選ぶこと」も大事だと強調されました。人通りの多い街頭で声を上げても誰の耳にも届きませんが、適切な場や人の前で語れば、共感を得てチャンスが広がります。つまり、自分の見せ方や立ち位置を考える「セルフブランディング」が重要とのことでした。

 さらに、「夜に悩みごとを考えない」ことも一つのアドバイスとして挙げられました。疲れた頭でネガティブなことを考えても、良い結論は出ません。夜に愚痴をこぼしたり、マイナスな話ばかりしても、周囲も自分も不幸になるだけです。もし気持ちを整理したいなら、鳥取のように自然豊かな場所で、一人で静かに過ごすのがよいとおっしゃられました。

 最後に、「誰に笑われても、自分を理解してくれる人は必ずいる。その出会いの瞬間を逃さないように、日々を楽しく生きてほしい」と締めくくられました。忍耐力を持ち、焦らず努力を続けること。かっこつけず、誠実に自分を磨き続けること。そうした姿勢が、地方でも都会でも、自分らしいキャリアを築く鍵になるとおっしゃられました。

 

※発言は意図を変えない範囲で要約しています

 

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