移住体験談

【新着】ここには残りの人生をかける価値がある

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江府町の名水の象徴ともいえる木谷沢渓流(きたにざわけいりゅう)。この水が「奥大山の水洗い珈琲豆」を生む。「ここに来ると江府の水は本当においしいと実感できます」と遠藤さん。

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県内屈指の米どころ江府町ならではの、大山と田んぼ。電線もない美しい風景は、写真好きからも注目の的。

おいしい水と出合い水洗いコーヒーを商品化


 江府町の町名は、町内を流れる「4つの河川が合流し府(中心)となす」が由来である。名峰・大山の広大なブナの森が育む水は豊富でおいしい。大手飲料会社の天然水の採水地もあり、品質の高さと味は折り紙付きだ。そんな水に縁(ゆかり)の深い江府町で、2020年秋から第二の人生をスタートさせたのが遠藤明宏(えんどうあきひろ)さん(65歳)。大手食肉会社を定年退職した遠藤さんが、この地で起業を決めたのは、この水があったからだ。
 「妻の実家が鳥取県倉吉市(くらよしし)で、両親のこともあり、退職後は大阪を離れて新しい仕事をしながら田舎で暮らしたいと思っていました」
 新しい仕事とは、コーヒーの生豆を水で洗ってから焙煎する「水洗いコーヒー」を世に出すこと。自家焙煎が趣味だった遠藤さんが、その味に魅せられたのだという。「生豆には土埃が付いていて、水洗いしてから焙煎すると雑味がなく、実にスッキリとした味わいになります」
 妻やコーヒー好きの知人からも好評を得たことで商品価値があると確信した遠藤さんが、水洗いに適した水を探すなかで見つけたのが江府町・奥大山の名水だった。「江府に焙煎所をつくりたい」と移住相談にも対応しているNPO法人「こうふのたより」に相談し、町から旧小学校の理科室を紹介された。
 「水道施設、焙煎用のガス設備と、必要なインフラが全て揃っていました。もう天命ですね(笑)」
 20年10月、「奥大山の水洗い珈琲合同会社」を起業、社名と同じ名の商品を江府町の道の駅に初出荷した。

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旧小学校の理科室にある遠藤さんのオフィス兼焙煎所。ここには農業・食肉事業者も入居しており、江府町の新たな食を生み出している。

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高品質のスペシャルティコーヒー生豆を1粒ずつ選別したのち、奥大山を源流とする冷水で優しく手洗いする。

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焙煎機は200万円で購入した。ガスも水も元理科室ゆえ完備。「手づくりなので数量は限られますが、さらに商品を増やしていきたい」と遠藤さん。

大山を見つつ毎日、観光気分で通勤

 
 遠藤さんの住まいは会社から約40㌔離れた倉吉市にあり、峠越えもある車通勤は約1時間かかる。
 「目の前には大山が広がり、ときには雲海も見えます。通勤は私にとって観光のようですね。大阪ではビルの谷間を通勤し組織の一員でしたが、今は山の谷間で主体的に仕事ができて本当にうれしい」と、遠藤さんは起業以来、ほぼ毎日働き、充実した日々を送る。
 遠藤さんの「奥大山の水洗い珈琲豆」は地元でも注目の的だ。焙煎していると近所の人から「いい香り」と声がかかることもしばしば。郵便局や銀行で気軽に世間話ができる、江府の人の垣根の低さもうれしいという。「この『奥大山の水洗い珈琲豆』を江府町、そして鳥取県を代表する物産品にすることを目指しています。さまざまなかたちで地域に貢献したいですね」
 創業から約1年、「奥大山の水洗い珈琲豆」は道の駅での商品ランキングで第4位に。地元の小学生が抽出してコーヒー牛乳をつくる授業をするなど、遠藤さんの目指す地域貢献は着々と進んでいる。
 「毎日が楽しい」と話す遠藤さん。江府町の水という地域資源とともに歩む第二の人生に、当分、休日はなさそうだ。

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「スッキリして飲みやすい」と好評を得ている「奥大山の水洗い珈琲豆」。パッケージも遠藤さん作だ。
ネット購入も可能(https://washed-coffee.jp)。

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「道の駅 奥大山」は、当初から「奥大山の水洗い珈琲豆」を販売してくれている重要なパートナー。道の駅の古海さん(右)からは「イベントもしたいですね」と話が出ているそう。

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コーヒー好きな遠藤さん夫妻。「私は会社、妻は実家のことなどで一緒にいるのは朝だけ」と2人で笑い合う。

江府町のここが好き


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晩秋の奥大山(遠藤明宏さん撮影)

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江府町の移住支援


移住者が「江府町空き家情報バンク」に登録された物件に入居する際、家財道具処分費用(上限20万円、10分の10)や、改修工事費(上限100万円、2分の1)に対しての助成がある。町内で起業する人には「チャレンジ支援事業補助金」として、事業費の補助も用意されている。また、お試し住宅「みらい家」は最長3カ月まで宿泊できる(3泊目まで1泊2000円、4泊目以降1000円)。移住相談などは、NPO法人「こうふのたより」が対応。

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 NPO 法人「こうふのたより」の皆さん


問い合わせ:江府町住民課 ☎0859-75-3223
問い合わせ:NPO法人「こうふのたより」☎0859-72-3122

宝島社発行「田舎暮らしの本」2021年2月号掲載

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