田舎暮らしに憧れはあっても、仕事や住居の不安は大きいと思います。僕の場合は祖父母の家がありましたが、やはり最初は就農するイメージは持てませんでした。まずは場所を問わず、田舎に住む知り合いに話を聞いて、田舎暮らしのイメージをつかむことをお勧めします。

 現在はスイカ、コメ、シイタケ、キャベツを栽培しています。農業の経験はゼロだったため移住1年目は、祖父に教えてもらいつつ、50~60種類の作物を少しずつ育てることから挑戦し、2年目から本格的にスイカの栽培を始めて、収入を得られるようになりました。祖父が亡くなった後も、集落の人たちから農業を教えていただけるのでありがたいです。

 苦労して栽培した作物を収穫するとき「今年も良いものができた」とやりがいを感じます。また農作物の市場価格は、その野菜や果物の出来不出来や需要はもちろん、市場に出回る他の農作物とのバランスなど、さまざまな影響を受けるので、収入を確認できたときはホッとすると同時に、やりがいを感じます。

 田舎暮らしを始めてから、薪割りや食事など、淡々とした日常生活の中にも楽しみを見つけられるようになりました。移住してから家族もでき、「Iターンしてよかったな」と思います。子どもが生まれたことを集落の皆さんがとても喜んでくれて、いつも野菜をおすそ分けしてくれることも、都会では経験できないことでうれしいです。

 鳥取県はすぐに人と繋がることができて、移住して5年の間に知り合いがとても増えました。こちらは酒蔵も多いのですっかり日本酒好きになり、よく友人たちとお互いの自宅でお酒を楽しんでいます。これからも家族と楽しく暮らしつつ、狩猟免許も取得予定なので山仕事もして、より自給自足に近づく生活ができればと思っています。

Q.Iターンするきっかけは?

A.小さい頃、夏休みを過ごした祖父母の家での暮らしに漠然と憧れていました。銀行員生活を送る中で、定年までその生活を続けるイメージを描けず、思い切って決断しました。

Q.Iターンで苦労したことは?

A.仕事への不安があったことから、1年間農家レストランで働いたりもしました。移住後、祖父や周囲のサポートもあり、農家として生計を立てられています。

Q.Iターンして良かったことは?

A.銀行員時代は、「こういう生き方をしないといけない」というプレッシャーがありましたが、農業は自分次第、結果次第なので、そのストレスから解放されたことは大きいです。

 移住前はひとり暮らしで、外食中心の生活でした。今は自家用の野菜も栽培していますし、ご近所さんからも野菜のおすそ分けをいただいているので買い出しは週に1回ほど。妻は味噌や保存食も手づくりしています。

 集落の行事に積極的に参加し、農家として地域を担う存在になってくれると思います。お子さんも生まれ、子どもの少なくなった集落にとっては、嬉しい出来事でした。今後の活躍を期待しています。

田村さんが働く場所
倉吉市服部の田畑

 倉吉市のブランド品種である「極実(ごくみ)」を含むスイカの栽培を中心に、コメ、シイタケ、キャベツを栽培しています。鳥取県産スイカは全国的に人気が高く価格も安定しているので、若手のスイカ農家も多いです。市内に農業大学校があり、就農にあたり行政の支援や研修制度が充実しているので、若い農業従事者が増えている地域でもあります。

 以前は近所付き合いはまったくなく、移住してはじめて経験しました。子どもが生まれたことを皆さんがとても喜んでくれて、農業のことなども教えてもらい助けられています。最初は人との距離感に戸惑う人もいるかもしれませんが、皆さん優しい気持ちで声をかけてくれているので、人付き合いも楽しんで田舎暮らしを満喫してください。

 田村さんは大手都市銀行に勤務し、農業経験ゼロから農家に転身しました。就農にあたりご自身も不安があったようですが、おじい様の助けはもちろん、集落の人とも積極的に交流を持って現在は農家としてひとり立ちしています。大工さんと2人で改修した築85年の古民家はとても居心地が良く、田舎暮らしを心から楽しんでいる様子がうかがえました。